ヨーロッパ全域に衛星放送を提供しているフランスの通信衛星企業ユーテルサットが、核開発をめぐるEUの対イラン制裁の一環として、イランからの衛星放送を遮断した。
イランの衛星放送チャンネルであるアルアラーム・チャンネル(アラビア語)、プレスTV(英語)、その他のニュースチャンネルなど計6チャンネルは、これまでユーテルサット社の通信衛星ホットバードを介してヨーロッパ全域に衛星放送を提供していたが、15日から、これらすべての放送が遮断された。

ユーテルサット社の今回の措置は、イラン側との契約反故に当たり、イラン国際放送のサラフラーズ局長は、「イランの衛星チャンネルは、西側のメディアとは異なる見解を有するがために遮断された。多くの抗議者が暴力的な取締りを受けている反ウォール街デモなどを報道したことが主な要因だ」と述べ、「彼らは表現の自由を掲げながら、その反対者であり、自国民が正しい情報を得ることを妨げている」と強く非難した。

一方、イラン国内では、西側の文化侵略を阻止する目的で、国民による衛星放送受信は禁止され、しばしば当局による違法パラボナアンテナ狩りが行われている。
しかし、取締りが追いつかないほど衛星放送の受信機器は国民の間に普及しており、当局はBBCとVOAのペルシャ語放送、および反イラン的論調が明らかな海外拠点のペルシャ語放送に的を絞って、妨害電波を流すことで対処している。

とりわけデモや選挙の前後には強力な妨害電波が流され、その間、めまいや頭痛を訴える市民が続出する。これに対し、テヘラン市議会の市議数名と市の環境委員会は、妨害電波によって引き起こされる人体への悪影響について責任機関に報告書を要請し、これを受けて先頃、イラン保健衛生省は、『妨害電波の健康への影響に関する特別調査委員会』を設置したと発表した。
【大村一朗】

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