ジャーナリストの後藤健二さんと湯川遥菜さんがイスラム国(IS)に殺害された事件によって、危険地域取材のあり方に関心が高まっているが、ジャーナリス ト自身が、なぜ危険地域を取材するのかを論じ合うシンポジウムが12日大阪で開かれる。60年代のベトナムから今年のイラクまで、現場で取材して来た ジャーナリスト5人が発言する。(合田創)

瓦礫と化したコバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)の町。4割近くは現在もイスラム国が支配、激しい戦闘が続く。(アレッポ県コバニで2014年12月下旬撮影・玉本英子)

瓦礫と化したコバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)の町。4割近くは現在もイスラム国が支配、激しい戦闘が続く。(アレッポ県コバニで2014年12月下旬撮影・玉本英子)

 

後藤さん、湯川さんがイスラム国に殺害された後、シリア取材を計画していた新潟県在住のジャーナリスト・杉本祐一さんが、外務省に旅券を返納させられ、イ ンターネット上に「政府に迷惑をかけるな」という書き込みが多数されるなど、危険地域を取材するジャーナリストに対し社会の風当たりが強まった。

「なぜ危険地域取材をするのかを、ジャーナリスト自身が社会に向かって説明する機会が必要だという声が上がり企画を立ち上げました」
主催する「4.12戦争と報道シンポジウム実行委員会」の石田肇さんは言う。

ベトナム戦争取材で著名な石川文洋さん、難民取材の第一人者小林正典さんら現役ジャーナリスト5人が登壇する。写真はフォトジャーナリストの小林さん。(小林さんのHPより)

ベトナム戦争取材で著名な石川文洋さん、難民取材の第一人者小林正典さんら現役ジャーナリスト5人が登壇する。写真はフォトジャーナリストの小林さん。(小林さんのHPより)

12日のシンポジウムに登壇するのは、ベトナム戦争取材を経験した戦場カメラマンの草分け的存在の石川文洋氏、国連難民高等弁務官事務所と契約して20年 にわたり世界の難民の現場を撮影して来た小林正典氏、毎日新聞記者としてアフリカ取材を担った高尾具成氏、15年にわたってイラクに通い、今年も3月まで イスラム国関連取材をしてきた玉本英子氏、朝鮮半島を長く取材してきた石丸次郎氏の5人。

「戦争、紛争がどのように報道されるかは、ジャーナリズムだけの問題ではなく市民の問題です。戦争では国家は嘘を付き情報操作をします。60-70年代の ベトナム戦争当時から報道への権力の干渉はあったはず。現代の統制は当時とどう違うのか知っていただきたいし、情報が統制されているという意識が社会にど れだけあるのかを考えるきっかけになれば」
と石田さんは参加を呼びかける。

またシンポジウムでは、この一年間に150日以上イラク、シリアに滞在した玉本英子氏が、映像を交えて現地報告もする予定だ。
<シンポの概要>
●なぜ危険地域を取材するのか
~ベトナムからシリアまで、ジャーナリズムと報道規制を考える~

4月12日(日)13:00~16:00
会場 エル・おおさか(大阪府立労働センター)6階大会議室
資料代 1000円
定員 200名
主催 「4.12戦争と報道シンポジウム実行委員会」

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