◆調査義務違反に罰則なし

じつは法違反はこれだけではなかった。

アスベストを含有するスレート片の出所が建て替え工事だったことから、堺市は大気汚染防止法(大防法)や府生活環境の保全等に関する条例における規制への適合状況も調べている。

市環境対策課によれば、新築後に園舎を解体する予定だったため、まだアスベストの事前調査は実施していなかったと元請け、施工業者ともに認めているという。労働基準監督署の動きは不明だが、事前調査の実施を定めた大防法および労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)違反とみられる。市は今後指導する方針。

事前調査がされていなかったことから、作業時のアスベスト飛散も疑われるが、「散水しながら手ばらしした」と主張しているという。事前調査をしていないのにアスベスト建材が本当に特定できていたのだろうか。まして、アスベスト建材だと知っていたなら、解体前に撤去するはず。作業手順に矛盾があり、そうした主張も怪しいものだ。実際にはアスベストを飛散させる作業だった可能性があるのではないか。

しかし、これらは書類送検の容疑からは除外されている。

大阪府警生活環境課は「大防法でもいろいろ検討したが、屋根材の石綿スレートは大防法の規制対象外。事前調査義務違反は罰則がなかったので立件にいたらなかった。安衛法石綿則も検討したが、事実関係が疎明(裁判官に一応確からしいと認識されるレベルの立証)できなかった」と明かす。

同じアスベスト含有のスレート建材をめぐる法違反をめぐり、廃掃法では書類送検との法的措置がされるにいたった。起訴されて有罪となれば、いずれも5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金である(法人は1000万円以下の罰金)。他方、大防法では法の対象外だったり、罰則が存在しないため立件を断念せざるを得ず、指導だけにとどまらざるを得なかった。2つの法の仕組みとその執行に鮮明な違いが出ている。

大阪府警は「石綿含有建材を割って土砂に混ぜて隠ぺいを図った。量はべつにして悪質性があると判断して立件した」とも説明する。

廃掃法における罰則・執行の厳しさは、かつて廃棄物の不適正処理・不法投棄が大きな問題となった結果であり、今回の措置もごく当然の対応である。

警察は確実なところで立件するため、スレート建材などの廃棄物を土砂に混ぜて残土処分しようとしていたことは不法投棄の未遂罪(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)がさらに適用される可能性があるが、こうした部分もじつは見送られている。

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