郡警察署を囲む塀。兵の外側の有刺鉄線を切断し、爆弾を仕掛けて穴を開けて中に進入した

12時間におよぶ襲撃を終え、3月21日午前11時ごろまでには、ほとんどのマオイストがベニを離れた。

襲撃のあいだ、軍も警察も防衛に必死で、自分たちの敷地の外に出ることはなかった。

その間、郡庁所在地はマオイストの占領下にあったといっていい。バザールの人たちは、明るくなって、彼らが自由に街路を行き来しているのを目撃している。なかには、店で買い物をしているマオイストさえいた。郡警察署に近い食堂では、警察署を占拠したあと、退去する前に大勢の武装マオイストが食事をしていった。

15人ほどのマオイストが食事に来た店の店主は、一晩中、戦ったあとも彼らが談笑している様子を見て、驚いた。店主は、そのときの様子を話す。
「彼らは郡警察署から強奪した武器や弾薬を運び出したあと、午前9時半ごろ、ここに来た。15歳から20代までの年齢で、皆ライフルを抱えて、半分は女性だった。

郡警察署建物。警官全員が降伏したあと、灯油をまいて焼き討ちした

全員が顔から汗をしたたらせて、疲れたように見えたけど、とても興奮しているようで、満足している様子だった。あれだけ長いこと戦いながら、笑っておしゃべりをしているのを見て、彼らには心臓があるのだろうかと不思議に思った。死ぬことが怖くないのだけは確かだ。彼らは店にあった前日の売れ残りのお菓子などを全部食べて、ちゃんと計算してお金を払っていった」

バザールの人たちに、彼らが引き上げるときの様子を聞くと、たいていの人が「畑でひと仕事終えて帰るかのように、あわてずに、のんびりと帰っていった」と答えた。彼らは来たときと同様、ベニ・バザールの裏にあるアルトゥンゲ山とミャグディ川沿いの道を通って、西へ戻っていった。

ほとんどのマオイストが 24時間以上睡眠をとっておらず、しかも、12時間の戦闘を終えたあとのことである。疲労は限界に達していたはずであるが、実は、戦闘はまだ終わってはいなかった。引き上げるマオイストの部隊に対して、軍はヘリコプターから空爆をしたのである。