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【ラングーン(ヤンゴン)から南西のデルタ地方にある刑務所】
「バイクを止めたい」って言い出したら、バイクの運転手はどう思うだろうか。
ほんのわずかな迷いの間に、バイクはすでに囚人の作業現場から50m以上も通り過ぎていた。
それに気づいてさらに慌ててしまう。
どうする、どうする、どうする。

同じ言葉が頭の中を反芻する。
そこに戻るべきかどうか逡巡している間にも、バイクは更に前へと進み、目の前の風景は変わっていく。
迷いは、仕方なかった。

囚人や地元の人以外誰もいない所でバイクを止めて、彼らの写真を撮ることは、目立ちすぎる。
それに写真を撮ることができるかどうかわからない。

それに当然、囚人を監視している看守がいるだろうし。
さらに、後で、バイクの運転手に迷惑がかかるかも知れない。

そうではなくても、バイクの運転手は、私が囚人の写真を撮ったことを誰かに話すかも知れない。
写真を撮ることと、自分の身柄を拘束されるかもしれない危険とを天秤かけると、今回は後者の恐れを考慮した方が良さそうだ。
あきらめは肝心である。
その時、そのように自分に言い聞かせた。
~つづく~

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