小倉清子のカトマンズジャーナル~王宮事件の目撃者スクープ記事

ogura_C.jpg実は今日、最後の試験があり、朝の時間も惜しんで教科書を読まねばならなかったのだが、ある新聞にあまりにも面白い記事が掲載されており、思わずじっくりと読んでしまった。

記事が掲載されたのは、このところダントツでスクープが多い日刊紙「ナヤ・パトリカ」である。今日の記事も、“本当だったら”もちろん大スクープものである。

記事のタイトルは「王宮殺人事件で、最初に殺されたのはディペンドラ皇太子」というもの。当時、王室ネパール軍の軍警察として、ナラヤンヒティ王宮内に勤務していた元兵士の証言に基づく記事である。
この人物の証言によると、当夜、彼は王宮内にいて、事件直後に撃たれたビレンドラ国王とニラジャン皇太子を軍病院まで運んだそうである。

最も衝撃的な証言は、パラス元皇太子が晩餐会の最中に抜け出して、車で誰かを王宮内に連れてきたこと。発砲はその直後に起こったが、証言者は最初の銃声がディペンドラ皇太子の部屋から聞こえたと言っている。

その後、パラスが外から連れてきた人がディペンドラのお面をかぶって、他の王族に発砲をしたというのである。
この人物によると、ディペンドラ皇太子は当夜、酔って自分の部屋で休んでいた。皇太子は何者かにより部屋で撃たれたときに、すでに亡くなっており、皇太子付き武官二人が彼の遺体を部屋から運び出したのだという。

ビレンドラ国王は軍病院に運ばれたあとも息があったが、病院では何の処置もされなかったとも話している。さらに、事件のとき、軍の兵士も何人が亡くなっているが、軍はこれを隠しているとも言っている。
実は、何者かがディペンドラのお面をつけて犯行に及んだという「マスク説」は、事件直後に、当時、首相官邸内でも最有力説として話に上っていると聞いていた。

さて、問題はこの証言者の正体なのだが、同紙は実名でしかも、写真入りで記事を掲載している。この人物は、事件から1週間後に王宮に「ディペンドラ皇太子は犯人ではない。
きちんと調査をしてほしい」という嘆願書を出したあと、かかわりのない殺人事件の犯人にされ、その後、現在にいたるまでナックー刑務所に入れられているそうである。弁護士を通じて刑務所で会見して記事にしたようだが、弁護士も彼の無実を信じているのだという。

証言者が大変な危険を冒してまでわざわざ嘘をつくとも考えられず、むしろ、危険を冒して真実を話し、この際に無実を証明しようと思ったと考えるべきなのだろう。

「ナヤ・パトリカ」は以前も、バイラブナス大隊で起こった大量行方不明事件に関しても、匿名の証言者に取材して、行方不明となった48人がシバプリのジャングルで軍に殺害されたというスクープ記事を掲載した。これをもとに、現場に人権関連機関が調査に入ったが、結果はいまだに公表されていない。
さて、記事を掲載した勇気には喝采を送りたいが、これが真実かどうか、ぜひとも追加取材をしてもらいたいものだ。

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