揺れるカシミール 廣瀬和司の緊急現場報告~独立派の千人規模の集会は、いまや当たり前 (2008/09/19)

【若者たちに捕まり、負傷した警察官】
(撮影:広瀬和司)

 

【スリナガル発(インド側)】
おなじみの金曜日である。午後の礼拝後、JKLFが集会を開くというので、彼らの本拠地である市内のマイスマ地区を訪れた。

先週、議長であるヤシン・マリク氏が、自宅拘束をされているのにもかかわらず現れたのは驚かされた、と書いた。JKLFの活動家にそのことを聞くと、あれは礼拝後に市民が大勢マリク氏の家に押しかけ、勝手に連れ出したのだそうだ。

警備の兵士や警官が常に6,7名いたはずだが、押し寄せる群衆に何もできずに逃げてしまったそうだ。当日、先に集会を開いていたこの活動家氏も、自宅にいるはずのマリク氏が肩車をされて来るのを見て、いったい何事か、と思ったらしい。このエピソードは、まさに今の運動が市民の運動であることを感じさせた。

今日のマリク氏の演説のテーマは2つだった。1つは10月6日にラル・チョークで集会を開くぞ、というもの。人びとも、「インシ・アッラー(神のご意思があるならば)!」と答える。もう1つは、若者たちへ、投石をするな、というものだ。これは、マリク氏だけでなく連携委員会全体の意思らしく、イスラム党のギラニ氏も同じように唱えている。あくまで非暴力で運動を行う、という意思表示である。

【若者たちに催涙弾を発射する警察官】
(撮影:広瀬和司)

1時間弱の集会の後、行進はなく、その場で終わった。だが、弁護士会や、また市民による自発的な行進が始まる。途中で、警察がやってきて止めようとするが、そのなかの指導者的役割の若者が投石などの暴力行為はしない、と説得して、行進は続けられた。

こうした統率の取れた千人規模の行進が自発的にできるところが、今の運動の特長である。
市民なのか、暴徒なのか?
この行進に1時間ほど付き合っていると「ナワタ地区で投石が始まったぞ」と連絡が入る。現地に着くと、服を引き裂かれた警察官が保護されてる姿が見える。

2人の警察官が若者たちの挟み撃ちにあって捕まり、暴行を受けたのだそうだ。「こんなことは良くない。警察官だってカシミール人なのに」と地元のカメラマンの1人がつぶやく。
「投石をするな」というリーダーたちの呼びかけは、過激なことで知られるナワタ地区の若者たちには通じなかったようだ。正直なところ、私もナワタ地区の若者たちの行動はやりすぎだと思う。彼らのフラストレーションはわかるが、彼らは警察を挑発するため、わざわざ警察署に石を投げ込みにいっているのだ。
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