hirose_080901_03.jpg【病院では地元住民による炊き出しが行われていた】(撮影:広瀬和司)

すると友人が「下町で誰かが撃たれたらしい。俺もいま聞いた」と言う。確認のため、知り合いの新聞社のカメラマンの携帯にかけるが、繋がらない。一人で行くのは危険なため、どうしようか迷うが、とりあえず行ってみることにする。現場に着けば知り合いはいるだろう。

外に出ると友人のS君に出会う。彼も、そのニュースは聞いたといい、通りすがりの他の友人も2人死んだ、と言う。ただ、場所がそれぞれ違う。
S君が、自分のバイクで現場にいってみよう、と言ってくれる。ありがたい。現場の一つと思われるサファ橋を訪れるが、タイヤを焼いた跡があり、兵士も多いが、それ以外は平穏である。

警察官に話しを聞くと、そこで10時半ごろ騒ぎはあったが、すぐ治まったという。
近くの州立病院に行くが、兵士の発砲によるけが人は来たが、重傷者は他の外科専門病院に運ばれたと言う。その外科病院に行くと、救急病棟に2人の該当者がいた。

一人はまだ16歳の少年で、外出許可が出て野菜を買いに行ったら、殴られて、至近距離から撃たれたそうである。周りの人の話によると、外出許可がでて一度に大勢の人びとが外に出たため、兵士たちがパニックになった、とも言う。

もう一人はオートリキシャのドライバーで「近くで騒ぎがあったかどうか知らないが、突然、兵士が向かって来て、殴られ、撃たれた」と言う。リキシャも壊され、彼を助けようとした友人も殴られたそうである。
病院の医師によると、外出許可時間少し前に出てきて殴られる人びとが、これまでも多く運ばれて来ているそうである。

hirose_080901_02.jpg【カルテには、CRPFによって殴られたため、と書かれていた】(撮影:広瀬和司)

病院の敷地内では、外出禁止令で買い物に行けない患者や家族にむけて、炊き出しをしていた。炊き出しをしているのは、政府機関や特定のNGOや政党ではなく、病院の近所の人びとのボランティアだそうだ。
一日2回、700人分の食事の費用を全部彼らが賄っているそうである。常に政情が不安な地域だが、それゆえに地域社会の繋がりが強靭になるのだろうか。

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