大阪市中央区の「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)が9月1日、リニューアルのため休館した。戦後70年の来年4月に再開するが、加害の事実も含め戦争の悲惨さを伝えてきた展示内容は大きく変わる見込みだ。 (鈴木祐太 栗原佳子 新聞うずみ火)

リニューアルのため休館した「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)。来年4月に再開するが、加害の歴史など大幅に縮小される予定だ。(撮影:新聞うずみ火)

リニューアルのため休館した「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)。来年4月に再開するが、加害の歴史など大幅に縮小される予定だ。(撮影:新聞うずみ火)

 

◆加害の歴史など大幅に縮小予定

「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)は1991年、大阪府と市が共同出資し開館した。

「戦場となった中国を始めアジア・太平洋地域の人々、また植民地下の朝鮮・台湾の人々にも多大な危害を与えたことを、私たちは忘れてはならない」という理念の下、先の戦争の加害・被害の両面から展示されている。

展示リニューアルは、大阪府市統合本部が主導してはじまった。「大阪人権博物館」(リバティおおさか)との一本化や橋下市長の提唱する近現代史を学習する施設などさまざまな案が出てきたが、最終的には戦後70年に向け、単独でリニューアルを行うことになった。

最大のリニューアルは、日本が行った加害展示の大幅縮小だ。

「大阪中心・子ども目線」という方向性が示されており、大阪空襲などに特化、「15年戦争」やアジア侵略の展示は大幅にスペースが縮小されるという。情報請求で入手した今年3月の資料によると、「15年戦争」に関するものは映像のみ。

また、「展示にあたっての留意点」として「政府の統一見解を踏まえる」ともいう。時の政府の意向に沿った展示内容にするというに等しい。

こうした動きに対して、リニューアルに反対する市民団体などは、館長との団体交渉、出資をしている大阪市に対して話し合いを持ってきた。その結果、住吉区に投下された模擬原爆の模型の展示など、少しの改善は見られたが、加害展示の縮小に対しては解決していない。

その加害展示が見納めとなる最終日の8月31日、入り口では、市民団体が「戦争賛美の平和館にしないで」などと抗議の声を上げた。

館内では、初代ピースおおさか事務局長、有元幹明さんが、元学芸員の常本一さんとともに、在日コリアンの女性グループをガイドしていた。侵略と加害の歴史を教える「B展示室」。展示資料には、理念に賛同したアジア各地の人たちから提供を受けたものもたくさんある。

初代「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)事務局長の有元幹明さんは、戦争の加害、被害の両面から戦争の悲惨さを来館者に伝えてきた(撮影:新聞うずみ火)

初代「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)事務局長の有元幹明さんは、戦争の加害、被害の両面から戦争の悲惨さを来館者に伝えてきた(撮影:新聞うずみ火)

 

ピースおおさかは90年代半ばから、「偏向展示」などの攻撃を受けるようになった。一部資料の撤去なども余儀なくされ、橋下市長が代表の大阪維新の会が台頭するなか、逆風はさらに強まった。

「ここに、『自虐史観の博物館』という貼り紙を貼られていたことがあったんですよ」。有元さんが示した柱の真向かいには、南京大虐殺と平頂山事件の犠牲者の姿を写した大きなパネルがあった。

「被害はどこから始まったのか。原因はどこにあるのか。アジア侵略の歴史を遡らないと戦争の真実はわかりません」。

公開はこの日限り。展示物を一つひとつを丁寧に説明する有元さんの声に、無念がにじんだ。【鈴木祐太 栗原佳子 新聞うずみ火】

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