ロヒンギャ・ムスリムの暮らす難民キャンプに通じる一本道。(ラカイン州にて撮影:宇田有三)

ロヒンギャ・ムスリムの暮らす難民キャンプに通じる一本道。(ラカイン州にて撮影:宇田有三)

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Q.「ロヒンギャ」について、ミャンマーやバングラデシュなど、それぞれの立場によっていろいろな解釈があるのですね。
A.誰が、どのような立場で「ロヒンギャ問題」を説明するかによって、誤解が生まれてしまいます。
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Q. 例えばどのような誤解ですか?
A.例えば「ロヒンギャ」という言葉です。
「ロヒンギャ」というのは英語読み、ミャンマー語では「ロヒンジャ」という通説があります。この「ギャ」とか「ジャ」というのは「人」という意味なんです。

Q.「ロヒン」とは?
A.アラカン(Arakan)の古代名(Rohang)やアラカン王国(Mrohaung)から派生したなど諸説あります。ですが、ロヒンをどう解釈するのかは直接「ロヒンギャ問題」とは関係ありません。

Q.「ギャ(ジャ)」というのが人という意味なら、日本語で「ロヒンギャ人」「ロヒンギャ民族」とするなら「ロヒン人人」「ロヒン人民族」って変になりますね。
A.だから「ロヒンギャ問題」を理解している人なら、単に「ロヒンギャ」と書く方がいいんですね。

Q.「ロヒンギャ・ムスリム」っていうのは「ロヒン人ムスリム」っていうことですか・・・。
A.これだけ「ロヒンギャ」という名前の由来が、その語源を理解されず誤解され、時間とともに広がってしまうと、集団を表すために「人」や「族」をつけてしまうのですね。その方が簡単で通りがいいようです。しかし、ロヒンギャ問題が民族問題になって、解決の糸口が見えなくなります。「ロヒンギャ・ムスリム」と書くのは、ロヒンギャはあくまでもミャンマー国内にいるムスリム人の一つを指し、「民族」ではないということを敢えて含んでいるのです。

ロヒンギャに対する差別について、「民族差別は許さない!」っていう形だけのスローガンは、運動として簡単に進めることはできますが、実際は複雑な問題があるということを分かっていただけると思います。
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