Q. 何をどう言い表すのかって、難しいですね。
A.例えば日本語で「サハラ砂漠」っていうじゃないですか。
Q. サハラ砂漠、ってアフリカの大きな砂漠の名前ですね。それが名前の呼び方と関係あるのですか?
A. サハラっていうのはアラビア語で「砂漠」っていう意味ですから、サハラ砂漠は「砂漠砂漠」ってなるし、韓国語の「チゲ鍋」は「鍋鍋」、ハワイの「フラダンス」は「ダンスダンス」になってしまいますよね。

Q.   使う側の無理解があるかも知れないけど、日本語ではそんな風に定着してきました。外国語をそのように使う方が簡単で便利ですよ。ロヒンギャという言葉もそれと同じようにはできないのですか?分かりやすいですし。
A.しかし、実際にロヒンギャと接する現地のバングラデシュ人(ベンガル人)は、ロヒンギャとはいわずに「バーマ・ジャ(ビルマの人)」って呼んでいる現実もあります。現地で案内してくれたロヒンギャを支援している知人は、バングラデシュの国境付近では伝統的に、ロヒンギャと呼ばずに「バーマ・ジャ」というのが普通なんですよ、と説明してくれました。

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Q.   でも、日本の富士山を英語で言うと、「Mt.Fuji」ですし、琵琶湖は「Lake Biwa」と英文表記していますね。ただ、東京にある荒川は「Arakawa River」で利根川は「Tone River」と表記していて、「kawa」付けたり付けなかったりしています。
A. 富士山を「Mt.Fuji」、琵琶湖を「Lake Biwa」と呼んでも、政治的な問題は起こってきません。民族や宗教的な対立もありません。だからこそロヒンギャのような言葉の使用の際には、外部の人こそが微妙な問題だとして意識的に使わねばならないと思っています。ミャンマーでは、細かな呼称を軍政に利用されていたことをもっと意識的ならねばならいと思います。特に軍政期が長かったということを常に意識する必要があるのです。(つづく)

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宇田有三(うだ・ゆうぞう) フリーランス・フォトジャーナリスト
1963年神戸市生まれ。1992年中米の紛争地エルサルバドルの取材を皮切りに取材活動を開始。東南アジアや中米諸国を中心に、軍事政権下の人びとの暮らし・先住民族・ 世界の貧困などの取材を続ける。http://www.uzo.net
著書・写真集に 『観光コースでないミャンマー(ビルマ)』
『Peoples in the Winds of Change ビルマ 変化に生きる人びと』など。

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