Q. なんだか複雑な歴史がからんで一筋縄では理解できないですね。
A. 私自身、ミャンマー人、ラカイン人、ロヒンギャに知り合いがいるのですが、この「ロヒンギャ問題」になると、いつもその複雑な歴史論争にもなってしまいます。

ミャンマー人やラカイン人たちは、もともと「ロヒンギャ民族」なるものはミャンマー国内にはおらず、違法なベンガル人(バングラデシュ人)がミャンマー国内に居着いているのだ、と主張しています。その一方、ロヒンギャたちの一部は、「歴史的にみるとラカイン(アラカンの王朝)はムスリムの王朝だ」とも主張しています。 

Q. 歴史論争に決着はつかないのですか?
A. このラカイン地域での実証研究はあまり進んでおらず、今すぐに歴史問題としての決着をつけるのは難しいと思います。

ラカイン州は、もともと上座仏教が優勢な地域だったのは間違いないようです。ただし、さまざまな資料からいえるのは、仏教を信仰していた当時のアラカン王朝は、イスラームの様式を取り入れて生活をしていたのも確認されています。仏教かイスラームかどちらかという単純に割りきれないのです。

私の出会ったラカイン人やミャンマー人たちの苛立ちの最大の要因は、ロヒンギャたちがアラカンの仏教王朝を否定するような発言をしていることです。それは上座仏教の保護者と自認するラカイン人の自尊心を傷つけることでもあるのです。(つづく)

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宇田有三(うだ・ゆうぞう) フリーランス・フォトジャーナリスト
1963年神戸市生まれ。1992年中米の紛争地エルサルバドルの取材を皮切りに取材活動を開始。東南アジアや中米諸国を中心に、軍事政権下の人びとの暮らし・先住民族・ 世界の貧困などの取材を続ける。http://www.uzo.net
著書・写真集に 『観光コースでないミャンマー(ビルマ)』
『Peoples in the Winds of Change ビルマ 変化に生きる人びと』など。

 

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