北朝鮮の検問所を望遠レンズで撮影。迷彩服の国境警備兵と褐色の軍服に「検閲」の腕章を巻いた兵士が、バスの乗客の証明書を確認しているようだ。平安北道のサクジュ郡を中国側から2019年9月に撮影石丸次郎

 

◆携帯で韓国風の言葉を使う若者を集中監視

大学生に対する統制も厳しい。1カ月2~3度、電子機器、携帯電話、パソコンの検閲が大学に入る。真先に検査するのは「通報文」だ。友人とのやり取りの中で「南朝鮮の傀儡言葉」を使っていないか調べるのだ。韓国ドラマ拡散の影響で、北朝鮮の若者の間に韓国風の言葉遣いが定着しており、金正恩政権は「敵の文化浸透」の典型として極度に警戒している。

「もし『通報文』に韓国風の言葉が見つかったら、保衛局(秘密警察)が介入して全ての電子機器をくまなくひっくり返して調べる。4月に入り両江道の〇〇大学で学生3人が『傀儡言葉』を使っていたとして検挙された。大学の青年同盟は連帯責任だとして、今後3年間一切表彰を受けられなくした。学部長も連帯責任を負わされることになった」

協力者は、最近発生した事件についてこう説明する。

携帯電話に対するこのような強力な検閲は、当然人々を委縮させ、不満を抱かせる。面倒なことにならないよう、外出する時は携帯電話機を家に置いて出る人が増えた。電話機を妻のものと取り替えて検閲に備える幹部も多い。人の携帯電話の中を覗くのは人権侵害ではないかと、度を超した検閲に抗議する人も増えているそうだ。

◆「反動思想文化排撃法」を適用か

それにしても、幹部の携帯電話まで検閲するとは尋常な強度ではない。協力者は次のよう
に説明した。

「昨年12月に『反動思想文化排撃法』ができて『手電話』の管理が体系的に強まった。情報交流所(IT機器の販売所のこと)や逓信管理局では、修理やアプリのダウンロードなどで客が『手電話』を持ち込んだら、徹底して検査することが義務付けられた。パソコンには『堡塁』という外国情報摘出ソフトを設置しなければならない。幹部であっても例外なく検閲、家宅捜査までしていると当局は説明しているけれど、幹部連中はうまくやって、やられるのは結局『メダカ』だけだろう」

「反動思想文化排撃法」の条文はまだ未公開のままだが、外国の動画や文書を見たり流布させた場合は最高刑を死刑とするなど、重罰を科すことが定められたとされる。