拘束されている人民議院副議長トゥントゥンヘイン氏。議会では2008年憲法改正合同委員会の委員長も務めた。国民民主連盟(NLD)中央執行委員。1988年の民主化運動で投獄された経験を持つ。(2018年8月ネーピードー、連邦議会提供)

 

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◆刑事司法を利用した恣意的な拘禁

国軍側と民主派側のふたつの政府に分断されているミャンマー。民主派側は、憲法廃止を宣言し、「クーデター」を起こした国軍側が憲法擁護を唱える。全権を握った国軍総司令官は刑法を改正し、新たな条項を適用して、政治家、ジャーナリスト、芸能人、市民らを次々と拘束した。一部は解放されたものの、未だに多くの人々が不当に拘束されたままである。2月から拘束されている国民民主連盟(NLD)幹部で人民議院副議長のトゥントゥンヘイン氏の裁判書類から、刑事司法を利用した恣意的な拘禁が行なわれていることを明らかにする。(赤津陽治

FIR(第一報録取書)。軍事保安部ココルイン大尉の通報を受けて、ラショー市中央警察署が(FIR)48/2021号として3月5日に作成し、事件として正式に受理した。(2021年3月、メーダジャンヘイン氏提供)

◆FIR(第一報録取書)とは

警察署に通報があると、警察官は事件の内容を聴き取り、First Information Report(第一報録取書。以下、FIR)を作成する。日本の警察の被害届に近いものだ。ミャンマーだけでなく、インドやパキスタン、バングラデシュなど、かつての英領インドの国々では、同じようにFIRが作成される。1898年につくられた英領インドの刑事訴訟法を基にしているためだ。

今回のトゥントゥンヘイン氏のケースでは、3月5日にラショー市警察署でFIRが作成されている。FIRに添付された通報書の内容は、次の通りである。

<FIR通報書全文>

FIR(第一報録取書)に添付された通報書(3頁のうちの1頁目)。北東軍管区司令部の軍事保安部の大尉がラショー市中央警察署に事件として受理するよう通報する内容。(2021年3月、メーダジャンヘイン氏提供)

【日本語訳】

署長  殿
中央警察署
ラショー市
日付:2021年3月5日
件名:事件を受理し措置が講じられるべく通報

1) 上記の件に関して、軍事保安部(北東軍管区司令部)の官報掲載番号・陸54723ココルイン大尉は2021年2月10日に前人民議院副議長で国民民主連盟中央執行委員のウー・トゥントゥンヘインことウー・トゥンアウンを国家の安全と法の支配のため、連行し尋問したところ、2021年2月5日に当人の元に、連邦議会議員による連邦議会代表委員会(Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw - CRPH)を委員15名で組織すること、そして、クーデター集団が不当に拘束している前大統領ウィンミィン氏と国家顧問アウンサンスーチー氏を含む国民民主連盟の幹部たち、活動家たちの即時解放のために尽力するよう、国際社会と国際連合に主張・要請、また、ミャンマー国民の意思を無視し、憲法にも現行法にも全く合致することなく、国の権力を不当に奪ったクーデター集団を承認・協力することなく、国民の真の意思である2020年の総選挙結果を実現するため、可能な方法で早急に措置を講じるよう主張・要請、軍首脳部が堂々と憲法に違反し、ミャンマー国民の民主主義・自由・人権を完全に消失させる武力による権力掌握の危険に直面しており、ミャンマー国民の民主主義と自由のため、国際連合と国際社会に対し、強力な支援を求める要望が記載された、国連に送付する文書2通を、NLD本部のモーサンスーチーがViberを通じて送付し、電話で連絡し、見解を回答するよう述べたため、同人は、同文書2通に同意する旨および異議なき旨を回答したことを尋問して把握した。

2)ウー・トゥントゥンヘインことウー・トゥンアウン(72歳・21年現在、父親ウー・チャーヘイン故人、国民登録番号:13ナカタ(国)007036、シャン州北部ナウンチョー市パーハッ地区6番、前人民議院副議長、国民民主連盟中央執行委員)は、刑法第505条a項に基づき、国軍軍人の誠実さ、健康、規律を破壊するよう、喪失させるよう、若しくはそれらの業務を遂行している政府に関わる公務員、若しくは国軍に対し、ある方法またはその他の方法で、妨害若しくは阻害し、またはそのようになることを知りつつ、並行政権樹立のような、CRPH(Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw)の設立に同意し、今後実施の議会に関することを国民に随時公表していくこと、CRPHの政策を国民に伝えて、支持が得られるよう、現政権に対し国際社会から圧力がかかるよう、また国内外の活動がより活発になるように意図して行なっていること、政治不穏を生じさせるよう扇動を意図的に行なっていることから、刑法第505-A条の規定に違反していることが判明した。

3) それゆえ、前項にある判明内容に基づき、ウー・トゥントゥンヘインことウー・トゥンアウンについて、刑法第505-A条と505条a項で法的措置が講じられるよう、添付の尋問調書(写し)とともに、事件として受理するよう、通報する。

(通報者)
陸54723ココルイン大尉
軍事保安部(北東軍管区司令部)

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