タイ国境から護衛として同行してくれたカレン民族解放軍の兵士。カレン民族同盟(KNU)の軍隊で7旅団あり、各旅団の管轄地域が『県』という行政単位になる。独自の行政・司法機構を持つ。

◆士気の高いPDFと低い国軍

国境を越え、ドーナ山脈を四輪駆動車で登り続けると、時折り、道沿いに朽ち果てた車や竹とビニールシートで作られた小屋を見かけた。人民防衛軍(PDF)の哨戒拠点だという。

PDFとは、武装闘争を決意して都市からやって来た若者たちの義勇軍だ。

2021年2月の国軍によるクーデター後、多くの市民が街頭に出て平和的に抗議デモを行なった。軍政側の鎮圧は次第に激しさを増し、発砲による死傷者が日々増加していった。

多くの若者たちが、少数民族武装勢力の解放区に向かい、軍事訓練を受け、武器を持って闘う道を選んだ。そうした武装組織はPDFと呼ばれ、全国各地に数多く生まれた。

クーデター後、都市でデモに参加した若者は、弾圧が強まるにつれ、KNUの解放区に逃れた。山中には、そうした若者たちの軍隊であるPDF(人民防衛軍)の哨戒拠点があった。

軍事政権に対抗する並行政権として2021年4月に樹立された国民統一政府(NUG)は、国防省を設置し、各地のPDFの統合を図ってきた。これまでに約300の部隊がNUGのPDF大隊として編成されている。NUGは、一大隊が約200人としており、推定兵力は約6万5000人とされる。

KNLA第6旅団地域では、PDFは基本的にKNLAの指揮下に組み込まれている。ドーナ縦隊、コブラ縦隊、白虎縦隊、紅竜縦隊、白竜縦隊、黒豹縦隊など9つの縦隊があり、KNLAとPDFの混成部隊のかたちをとる。通常、各縦隊の指揮官はKNLA側の軍人が務め、副指揮官をPDF側の軍人が務める。

カレン民族解放軍第6旅団第27大隊長のヤンナイン大佐。クーデター前は、日本の援助で建設されたレイケーコーのプロジェクトに関わり、来日経験もある。

「PDFの若者たちの能力は高く、非常に士気が高い。国軍側は、地上戦のほとんどで我々に負けている」

KNLA第6旅団第27大隊長のヤンナイン大佐(55)は、そう話す。

そして、多くの国軍兵士が捕虜になっていることを明かした。

「以前ならば、考えられなかったことだが、今は地位の高い将校までが次々と捕虜になっている。士気が低く、兵士としての資質も十分に備えていない者が多い。ほとんどの大隊は、100人程度の人員しかいない。全国で戦線が拡がっているため、休暇もない状態で激務を強いられ、疲弊している」。(続く)

※写真はすべて、2023年2月にミャンマー・カレン解放区で赤津陽治撮影。

<ミャンマー現地報告>内戦が深刻化するミャンマー・カレン解放区(1)タイ国境の街から解放区内へ
<ミャンマー現地報告>内戦が深刻化するミャンマー・カレン解放区(2)地上戦の劣勢から空爆を多用する国軍
<ミャンマー現地報告>内戦が深刻化するミャンマー・カレン解放区(3)都市から逃れてきた人びと

 

★新着記事