委員からは反対なし

除じん機能を有する電動工具とは、電動工具と石綿を除去できる掃除機を組み合わせたもの。切断や研磨などをする電動工具の先端に防じんフードを付けた掃除機のノズルを装着しており、防じんフードを作業面にぴったりつけることで石綿の飛散を抑制しつつ石綿粉じんを除去する。

同省が改正方針を示したのは、石綿含有成形品の切断・破砕など(石綿則第6条の2)、石綿含有仕上げ塗材の電動工具による除去(石綿則第6条の3)、石綿等の切断・破砕など(石綿則第13条)の3つの規定だ。

石綿則第6条の2と第6条の3では、作業場所の隔離に加えてけい酸カルシウム板第1種や仕上げ塗材の常時湿潤化などの措置を講じることを事業者に義務づけている。この際、「常時湿潤化」以外の粉じん発散防止措置を認めていない。

電動工具の使用について定めた第6条の3に関連しては、現在「常時湿潤化」が必須で「切断面への散水などの措置を講じながら作業を行う」必要があるが、散水しながら電動工具を使用することは感電のおそれがあると指摘されていた。また、湿潤化の代替措置として認められているはく離剤については「有害性による健康障害の指摘もある」という。

切断・破砕などの作業時には適切な防じんマスクを使用することが義務づけられていることから、同省は「電動工具を使用する作業においては、除じん性能を有する電動工具を使用することにより、労働者の石綿等のばく露を低減しつつ、感電の危険性やはく離剤による有害性を避けることができ、作業場の安全衛生状況が全体として向上することが期待できる」との見解だ。

具体的にはけい酸カルシウム板第1種(第6条の2)と石綿含有仕上げ塗材(第6条の3)の切断などをともなう作業では現在の「隔離+常時湿潤」だけでなく、「隔離+除じん機能付き電動工具」との選択も可能にする。

またそのほかの石綿含有成形品(第13条)の切断・破砕などでは努力義務とされていた「除じん性能を有する電動工具の使用」「その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置」を「湿潤化」と同等の義務規定として、そのいずれかの措置で施工可能とする。

これらの同省の提案について、5月16日の検討会で鷹屋座長が念を押して確認したが、委員から反対はなかった。

次回6月15日の会合で同省は報告書案を示す。順調なら6月会合後すぐにパブリックコメントを開始し、7月末の労働政策審議会(安全衛生分科会)で議論することになる。今後の審議しだいではあるが、同省は早ければ今秋、遅くとも年内には石綿則を改正する方針だ。

しかし、委員の1人は結局反対までしなかったものの、「切断作業はかなり(石綿が)飛んでいる。グラインダーで切断するのは適切ではないな」と指摘している。

今回の改正方針について、石綿除去の現場に詳しい専門家からは「いくら集じん機が付いているといっても実際には高濃度の石綿が飛散している。湿潤なしは考えられない。実質的な規制緩和ではないか」と批判の声が上がっている。

【関連資料】厚労省のアスベスト規制見直し含めた切断・破砕などの作業方法の整理や改正方針の詳細

 

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