
◆不法行為に目をつぶる当局
先にも述べたように、当局は商行為などの個人の経済活動を厳しく統制している。北朝鮮では、一般労働者の月額労賃(給与)は3万5000(約0.5米ドル)~5万ウォン(約0.7米ドル)に過ぎない。「1000~5000ドル」という途方もない大金を寄付するということは、不法な方法で蓄財していることの揺るぎない証明でもある。
だが、当局は意図的に見逃しているという。
「証書があれば、それまでの不法行為で稼いだ金を国に納めたと認め、目をつぶってくれる。だから、不法に稼いでいる者たちは金を持ち寄って献上しようとしているのだ。今回、人民軍に金を出した人の中には、山林保護所を抱き込んで木材を横流しして金儲けをした幹部もいる。問題にならないようにすぐに基金に金を入れていた」(B氏)
つまり、個人の不法な稼ぎに目をつぶるかわりに、資金不足の国家がその一部を吸い取ろうとする狙いと見られる。だが、国の財産を横流しして金稼ぎをすることを当局が無制限に許すわけにはいかない。現場を押さえられた場合は、見せしめとして処罰されるケースもあるという。
「建設資材を横流しした三池淵(サムジヨン)道路建設の幹部は、党員証を剥奪され、教化(懲役)3年になった。基金へ金も出していたが、現場で引っかかれば終わりだ」
◆結託を強める国家とトンチュ
当局は、講演や3放送で寄付者を紹介し、国家建設に貢献した者として称揚しているという。一方で、労働者はどうあがいても寄付などできない。この事実を住民たちはどう見ているのか?
「どうやって稼いだ金でも、結局は困っている人や国家に貢献しているので、不満はあるもののいいことだと考える人の方が多い」(B氏)
※3放送:宣伝用の有線放送。北朝鮮の全家庭に設置されている。
アジアプレスは、コロナ・パンデミックを機に、金正恩政権が統治の方法大きく変えたと見ている。今回の動きも、国家とトンチュが一層結託を強め、民間の資金を国家が活用しようと試みるひとつの事例と分析することができるだろう。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
























