① 収穫が終わった畑で落穂拾いをする住民たち。拾い集めた穀物を入れるカバンを肩にかけている。家族だろうか。真ん中の男性はまだ学生のようだ。2025年9月、平安北道朔州郡を中国側から撮影(アジアプレス)

北朝鮮では春の端境期「ポリコゲ」に入り、脆弱層の中に飢えに苦しむ人が増えている。両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市では、食事の足しにしようと食べた野草で中毒死する事件があった。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のある農村でも、栄養失調で路上に行き倒れている人が見つかる騒ぎがあった。当局は、対策のほとんどを企業や農場に担わせているという。4月上旬までに両地域の取材協力者が伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン

◆腹の足しに食べた山菜で中毒死…もっとも苦しい「春窮」の始まり

北朝鮮では毎年、3月末頃から飢える世帯が増加する。前秋に収穫された食糧が消費されて流通量が減って価格が上昇、農民たちも保有分を食べ尽くす時期だ。この春窮期は「ポリコゲ」と呼ばれ、6月頃のジャガイモと麦、8~9月のトウモロコシの収穫まで、数多くの人がひもじさに苦しむ。恵山市の取材協力者A氏は、3月下旬にあった痛ましい事件についてこう語る。

「3月23日に母娘2人が死亡した。食事の足しにしようと、ジャンマダン(市場)で夜遅くに安くなっている山菜を買って、朝にナムルご飯にして食べたところ、腹が痛くなり病院に行ったがそのまま亡くなったそうだ。恵河(ヘガン)洞でもジャンマダンで売っている山菜を老人が買って食べ、嘔吐と下痢で死亡した」

いずれも山菜の中に、誤って毒のある草が紛れ込んでいた模様だ。A氏は続けてこう説明する。

「貧しい人たちはトウモロコシ粉と山菜を茹でたものくらいしか食べるものがない。山菜は1キロが1000ウォンと安いので、みんな腹の足しにしているのだ」

② 農場員らが収穫した作物を牛車に載せている。2024年10月、慈江道満浦市を中国側から撮影(アジアプレス)

◆年初から100~150%のインフレ

最近、北朝鮮ではすさまじい勢いでインフレーションが進んでいる。アジアプレスが実施している物価調査によると、5月1日時点で白米1キロが3万4000ウォン(約73円)、トウモロコシ1キロが9000ウォン(約20円)だ。年初に比べて白米は106%、トウモロコシは150%も上昇している。一方で、一般労働者の月額労賃(給与)は3万5000~5万ウォン(約75~107円)程度でしかなく、安い山菜が生活の助けになることが分かる。
※北朝鮮1万ウォン=21.4円(5月1日現在)

当局は、中毒性のある野草が出回らないように販売前に検査を始めたという。しかし、「取り調べを避けてこっそり売る人も増え、山菜まで価格が上がって買うことが難しくなっている。死亡事故が発生しているので、取り締まること自体はいいが、暮らしには何の助けにもなっていない」とA氏は話す。

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