◆監視・情報収集された当事者による違憲訴訟

「『大垣警察市民監視事件』は氷山の一角なのです。警察庁警備局長が国会答弁で『それぞれの管内において』必要な情報収集、事業者(企業など)への情報提供と意見交換は、『通常行っている警察の業務の一環』であると述べているように、全国各地で公安警察による市民監視・情報収集がおこなわれているわけです。このように市民が何か声を上げると警察の監視対象にされる。そんなことが許されていいはずがありません」

そう訴えるのは、公安警察から監視・情報収集の人権侵害を受けた当事者のひとりである近藤ゆり子さん(77)だ。近藤さんは公安警察のやり方を次のように批判する。

「公安警察はシーテック社との最初の情報交換・意見交換で、風力発電施設計画について何も知らなかった私のことを、『大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する近藤ゆり子氏という人物がいるが、御存じか』とわざわざ情報提供し、『このような人物と繋がると、やっかいになると思われる』と決めつけ、『徳山ダム建設中止訴訟を起こした張本人である』と強調して、シーテック社側が私を危険人物視するよう仕向けました」

「大垣警察市民監視違憲訴訟」の原告となった近藤ゆり子さん(2026年5月13日撮影)

「公安警察は以前から私という個人に注目して情報を集め、データベース化して、市民運動を危険視する色眼鏡で『思想信条』を評価してきたにちがいありません。それを元にバイアス(偏見、意図的な誇張)をかけてシーテック社に情報提供し、市民運動つぶしの情報操作をしていたわけです。収集した情報をつなぎ合わせて、公安警察にとって使い勝手のいい人物像、虚像を作り上げているのです。それは公権力による個人の尊厳を侵す行為、人格権侵害ではないでしょうか」

公安警察による監視・情報収集の対象とされた近藤さんたち当事者の4人は、2016年12月21日、岐阜県を相手取って、大垣警察の違法・違憲の情報収集によりプライバシー、個人情報をみだりに収集などされない自由、表現の自由、表現行為人格権を侵害され、精神的苦痛をこうむったとして、国家賠償請求訴訟を岐阜地裁に提訴した。18年1月29日には、岐阜県と国(警察庁)に対し、警察が収集した個人情報の抹消を求める追加提訴もおこなった。
「大垣警察市民監視違憲訴訟」である。

この違憲訴訟の原告と支援者が結成した市民団体「『もの言う』自由を守る会」(岐阜県大垣市)は、裁判を進める過程で、こう訴えた。

「知らないうちに、どこで、どんな情報が、どんな方法で、どう利用されているかわからない、それが何の法的根拠もなく、警察の恣意的判断でおこなわれているようでは、私たち市民は安心して『ものを言う』ことはできません」(つづく)

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)、『横田空域』(角川新書)、『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

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