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バグダッド市内に入った米軍の戦車と兵士に 向かって、たった一人で立ち向かって抗議する 英国籍パキスタン人女性 ウスマック・バシルさん (撮影03年4月9日)

野中章弘×綿井健陽 対談(5)
なぜ自衛隊はイラクに派遣されるのか。
米軍のバグダッド空爆開始から現地で取材を続けたジャーナリストが派兵の論理を撃つ!

*野中  そういう点で、日本のマスメディアの取材は戦闘終結宣言があってからも、十分にバランスが取れているとはいいがたい。特にテレビは検証能力が非常に弱い。
*綿井 ぼくは最近発想を転換して、自分が取材してきた映像・写真・活字を、いちばんいい形でマスメディアを通じて最大限に発表するという方針です。マスメディアの衰退を嘆くよりも、こちらが現場で取材したことを発表して、メディアの中にいる人たちを刺激するという形の方がいいだろうと思っています。もうマスメディアの衰退を嘆いているだけでは何も変わらないのではと感じています。

*野中  日本のメディアには戦争取材の準備もされていないし、戦争取材に経験のあるジャーナリストがなかなか育っていない。それに対応していく方法をきちんと考えなければならない。
*綿井 昨年の空爆が続いていた間はともかく、イラクの取材を「社員記者」が誰も対応できず、外国通信社の配信映像やフリーランスの取材だけに頼る状態は、さすがにもう限界でしょう。ようやく日本のテレビ局も自衛隊が派遣されてからの取材体制を作り始めました。その際に、戦争取材は戦争取材の専門家に、時間枠もギャラも保証して頼むという考え方がある。しかし、一人のフリーのジャーナリストが取材するだけで、イラクのすべての側面を伝えることはできない。マスメディアが、現地に取材チームを常時配置して、さらに周辺取材も厚くして、なおかつ安全対策もたてる。そういう形で進めないと長期的な奥の深い取材はできないです。
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