ペシュメルガ兵が撤退し、町を制圧した「イスラム国」と対峙したのが、クルディスタン労働者党(PKK)傘下の戦闘組織、人民防衛隊(YPG)だった。「イスラム国」の前線を突破し、取り残されていたヤズディ住民の一部を救出。シリアのYPG地域に移送し保護した。このため急速な支持を獲得しつつある。シリアでもYPGが「イスラム国」と激しく戦う状況になっている。アメリカは長年、PKKを「テロ組織」としてきたが、「イスラム国」という共通の敵を前に今後、政治情勢も変わることが予想される。写真は「イスラム国」と戦闘するYPG。(YPG撮影映像から)

ペシュメルガ兵が撤退し、町を制圧した「イスラム国」と対峙したのが、クルディスタン労働者党(PKK)傘下の戦闘組織、人民防衛隊(YPG)だった。「イスラム国」の前線を突破し、取り残されていたヤズディ住民の一部を救出。シリアのYPG地域に移送し保護した。このため急速な支持を獲得しつつある。シリアでもYPGが「イスラム国」と激しく戦う状況になっている。アメリカは長年、PKKを「テロ組織」としてきたが、「イスラム国」という共通の敵を前に今後、政治情勢も変わることが予想される。写真は「イスラム国」と戦闘するYPG。(YPG撮影映像から)

◆写真特集「イラクのヤズディ教徒」のむすびに
殺戮と迫害という現実を私はいま目の前にしている。多くのヤズディ教徒が包囲され、命を奪われた。世界はそれを止められないでいる。私は悲しみと怒りをもってこの事態に直面した。
私たちのヤズディ教徒の知人、取材をともにした友人たちの家族や親戚も「イスラム国」によって殺されたり、町を追われた。彼らが暮らしてきた村や町 が一瞬にして消滅した。これまで日本にほとんど知られることのなかったヤズディ教徒が、いまのような虐殺という形でメディアで報じられることになるとは想像もしていなかった。

アフガニスタン空爆当時、アメリカのメディアはタリバンの蛮行を繰り返し報じ、人道名目の空爆が正当化された。こんどは「イスラム国」の無法とともにヤズディ教徒救出の人道が持ち出されている。これまでイラクで、自分たちなりに人びとを見つめ続けてきた取材者として、バグダッドやファルージャで米軍の空爆や軍事作戦が何をもたらしてきたか も知っている。ゆえに、今回の事態で、私たちの友人たちが武装組織による殺戮にさらされていることを突きつけられたとき、そして誰も彼らを助けるすべがな いと知ったとき、「人道」の名のもとに空爆をする米軍をどう受け止めるべきなのか、複雑な思いでいる。

ヤズディ教徒が迫害され、21世紀が中世に逆戻りしたかのような状況を看過できるものではない。一方で、アメリカがイラク戦争によってこの国をめ ちゃくちゃにしてしまったこと、その犠牲となった人びとに目を向ければ、今後の軍事作戦がどんな結果をもたらすのかも懸念せざるをえない。新たな混乱に巻 き込まれる、と空爆に反対する米国内の声は、あまりに彼らに都合のいい「理由」のようにすら聞こえる。そもそもいまイラクで起きていることの原因を作り出 したのは誰なのか。

同じとき、パレスチナで続く空爆。住民が爆撃で殺されている。戦争や混乱にはいくつもの前兆がある。それを分かっておきながら、国際社会はどうして 殺し合いをくい止めるすべを、いまだに持てないでいるのか。悲しみと無力感が交錯する重い気持ちでヤズディの人びとの姿を伝えなければならなかったことに、胸が詰まる思いでいる。いま深刻な危機にあるイラクのヤズディ教徒。かれらへの取材は今後も継続するつもりだ。【玉本英子】
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◆第1部「ヤズディ(ヤジディ)の習俗、文化、迫害の歴史」(1~7)一覧
◆第2部「イスラム国侵攻後のヤズディ居住地現地取材と女性拉致被害」(1~7) 一覧