10月半ばに始まったイラク軍、クルド・ペシュメルガ部隊によるモスル奪還戦直前、ISは市内の様子を伝える写真を公開。市民生活は平穏であることを強調している。(IS写真)

10月半ばに始まったイラク軍、クルド・ペシュメルガ部隊によるモスル奪還戦直前、ISは市内の様子を伝える写真を公開。市民生活は平穏であることを強調している。(IS写真)

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10月中旬、モスル奪還戦の緊張が広がった。市内にいる70代の女性が、クルド自治区に避難している家族のもとに電話をかけてきた。戦闘機が飛び交い、空爆の巻き添えになるとおびえているという。食料や燃料の確保など、住民は不安の中にあった。イラク軍は、モスルでの戦闘でISに壊滅的な打撃を与えるために、シーア派民兵組織を多数、投入している。統制の緩い民兵は、IS戦闘員の死体を焼く動画をネットで公開するなどして問題となっている。

「ファルージャでは、シーア派の報復でスンニ派住民が殺害されたと聞いた。IS支配が終わったあと、今度はシーア派兵士が町にやってくることが怖い」。女性は携帯電話でそう話した。

ISを町から一掃しても、先行きは不透明なままだ。どの人が協力していたか、といった隣人どうしの密告や、部族の衝突が懸念される。イスラム教の宗派とキリスト教、そしてアラブ人やクルド人など100万の住民が、かつての隣人関係を修復できるのだろうか。

「モスルはフセイン政権崩壊以降、ずっと混乱が続いてきた。あと何年、続くのか」。かつて取材した際、住民がそう言った。戦火に引き裂かれた人びとは、いま次の恐怖に怯えている。【玉本英子】

(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」11月8日付記事を加筆修正したものです)

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