◆「国際社会は私たちを見捨てた」

シリア・イドリブ県のハーンシェイフン市で4月4日に起きた化学ガス攻撃の被害者。(サラキッブ病院にてアハメット医師撮影)

4月4日早朝、イドリブ県で空爆があり、およそ100人が死亡する事件が起きた。化学兵器と見られ、神経ガス、サリンが使われたとの報道も出ている。被害者が運び込まれた病院で救護と治療にあたる医師が電話取材に応じ、その惨状を伝えた。(玉本英子) 

【動画を見る】【シリア・ダマスカス近郊 化学兵器攻撃から3年】数百人の犠牲者ほとんどは一般市民

イドリブ県サラキッブ病院のアハメット・アル・アサド医師。現在、多数の被害者が運び込まれている病院で被害者の治療にあたる。

電話がつながったのは、イドリブ県サラキッブ病院のアハメット・アル・アサド医師(39)。現在、多数の被害者が運び込まれている病院で被害者の治療にあたっている。県南部のハーンシェイフン市で空爆が起きたのは朝7時頃で、洗剤のような匂いがして気分が悪くなったと生存者は話しているという。その後、50人ほどの被害者が50キロ北にあるサラキッブ病院へ運ばれた。ほとんどが女性と子どもたちで、口から青い泡を吐き、呼吸困難な状態だったとアハメット医師は語る。

アハメット医師はサリンだと思ったと話す。この地域では2013年、2015年と2度にわたり神経ガス攻撃があり、その際、水で目や身体を洗い、患者に酸素マスクをつけるなどして治療にあたったからだ。病院は痙攣する患者の姿と、家族の叫び声で騒然としたという。サラキッブ病院ではこれまでに7人の死亡が確認された。

「空爆ができるのは、アサド政権かロシア軍。攻撃したのは彼らしかない」。
反体制派の拠点であるこれらの地区には電気供給がない。病院では発電機を数時間まわすのがせいいっぱいで、薬もまったく足りないという。

「困難な中でも、救護を求める人がいる限り最後までここに残る。これまでも化学兵器攻撃が起きたのに国際社会は私たちを助けてくれなかったし、誰も守ってくれなかった。神に祈るしかない」。
アハメット医師は悔しさと怒りの混じった声で話した。【玉本英子】
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