人工透析の治療を受ける少年。電気が止まれば、治療を受けられない。2017年7月ガザ市にて撮影土井敏邦

 

電力危機の原因

この2ヵ月間、ガザ地区の電力事情は悪化の一途をたどってきた。とりわけ今年4月、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府(PA)が、ガザ地区を実効支配するハマス政府に政治的な圧力を加えるため、イスラエルにガザへの電力供給を減少するように要請し、これまでPAがイスラエルに支払ってきた電気料金の額も縮小した。

そのためイスラエルは6月からこれまでの120メガワット/日の電力供給を70メガワットに、つまり約42%の送電をカットした。しかもガザ内の発電所もイスラエルやエジプトからの燃料補給も激減して一時20メガワットほどしか発電できず、ガザ全体で必要な電力550メガワットの十数%しか供給できない状況に陥った。

2014年ガザ攻撃以前は一日8時間以上の電気をガザ地区住民は得られた。8時間送電され、8時間停電という具合にして、50%の電力が供給できたのである。 しかし今、ガザ地区の全体で1日2~4時間しか電気がない。なぜこうなってしまったのか。ガザ発電所のラフィフ・マリハ所長にその背景を聞いた。

「ガザ地区での人口の増加、そして電気に頼るライフスタイルの変化も背景にあります。でもそれは決して贅沢な生活のためではなく、基本的な生活に必要な電力です。例えば水を汲み上げるポンプ、汚水処理のための電力、飲料水不足を補う淡水化工場の操業、さらに病院や学校など生活の根本的な需要のためなのです。

飲料水や汚水処理や病院などは住民にとって死活問題です。学校でもコンピューターやインターネットは不可欠ですし、電気がなければ子どもたちは学校や家で勉強もできないのですから。

ガザの電力需要が増える一方で、供給は減少しています。2006年にイスラエル兵人質事件を機にイスラエルが発電所を攻撃し、変電施設が破壊して以来、電力危機が始まりました。2014年のガザ攻撃では発電所の大型燃料タンク2基が破壊され、私たちは今なお1~2日分の燃料しか保管できません。

この発電所が機能するためには途切れなく燃料がイスラエルかエジプトから補給されなくてはならならないのです。だから国境の封鎖は直接、発電所の稼働に影響してきます。何かの理由で燃料補給が遅れたり止まったりすると、発電所の稼働はストップしてしまい、電力を供給できなくなって住民の苦悩をさらに増すことになるのです。

この発電所は120~140メガワットの発電能力があるのに、現在、80メガワット以下しか供給できません。十分な発電のためには、封鎖や政治問題でその補給が途切れことがないよう、燃料の安定的な補給が保障されなければならない。もしこの電力危機が続けば、ガザ地区は将来、人が住めない場所になってしまいます」
(第2回>>)

土井敏邦(どい・としくに)
1953年佐賀生まれ。1985年以来、30年以上にわたってパレスチナを取材。主な映画作品に「沈黙を破る」「異国に生きる」など。著書には「アメリカのユダヤ人」「沈黙を破る」「『和平合意』とパレスチナ」など多数。

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