電力不足で処理されないまま、海に放流される下水(2014年7月、ガザ地区ハンユニス市で撮影 土井敏邦)

 

◆海に放流される下水

電力不足でほとんど機能不全に陥っているのが下水処理だ。

ガザ市に隣接するビーチ難民キャンプは地中海に面している。その海岸の一角から、錆で褐色に変色した太い鉄のパイプが海水に突き出て、そこから勢いよく下水が放流されている。当たりに下水の強烈な悪臭が漂い、長くそこに留まっていられない。本来水色のはずの海面も100メールほど先まで黄土色に変色している。下水による海の汚染状況は一目瞭然だ。

その下水放流パイプの近くに住む男性は、かつて海辺にカフェを経営していた。しかしこの下水の悪臭のために客が店に寄り付かなくなり閉店した。1歳になる娘も、大量に発生する蚊のために皮膚病に苦しんでいる。

処理されない下水の海への放流はここだけではなく、数十キロにおよぶガザ地区全体に広がっている。そのために、ガザ政府当局は、海岸の50%以上を「遊泳禁止」に指定した。しかし住民はそれでも海辺で暑さを凌ぐために集まってきて、泳ぐ者も少なくない。

「電気の問題が出てきた2、3カ月前から、私や街の市長たちも『海で泳いではいけない』と呼び掛けているのですが、どうしても住民は海辺に群がり海に入ってしまうんです」と言うのはガザ海岸を管理する当局の責任者モンゼール・ショブラックだ。「貧しい住民たちは、他にレクレーションの手段がないんですから」。

電力危機で家に電気もないため暑さを凌ぐ手段もなく、テレビやパソコンなど娯楽手段も奪われた貧しい住民は、海辺で涼み、海水で暑さを凌ぐしか楽しみがないのである。

大半の下水処理場が、電力不足のために処理できず、そのまま海に下水を放流する中、イスラエルとの国境に近いガザ地区北部ベイトラヒヤ地区の下水処理場には例外的に16時間送電され、下水処理ができるようになっている。

「イスラエル側から下水を海へ放流することを禁止されています」と所長のラジーブ・アルアンガハがその理由を語った。つまり国境に近いベイトラヒヤ地区で海が下水で汚染されると、それがイスラエル南部にまで広がり、イスラエルの海が汚染されてしまう。そのためにイスラエルの海岸が「遊泳禁止」になることをイスラエル当局は恐れ、この処理場に特別に電力を供給しているというのである。

第3回>>

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