タルマレ村でのインタビュー
ルクム郡のマオイストからの接触を待つために、タルマレ村には2泊した。宿泊した農家には、健康を害した10代後半の2人の女性マオイストが休養していた。具合が悪いにもかかわらず、二人とも家の仕事をよく手伝う。一般の村人の支えがなければ、彼らの活動も成り立たないことを知ったうえでの最低限のルールなのだろう。どこで会ったマオイストも、党内での地位の上下にかかわらず、皆、食事のあとは自分の食器を自分で洗っていた。

「マオイストが泊りにこない日はほとんどない」という59歳の家主の言葉の端々から、彼がマオイストの強い支持者であることがわかる。5人の子供のうち、2人がマオイストだという。庭先でたまたまこの家を訪ねてきていたマオイストの女性組織の中央委員にインタビューをしていると、家主も興味深そうに聞いている。「王制をどう思う?」と彼に質問をふってみた。

「人を殺しても法律で罰することができない国王など、この国には必要ない」
明確な答えが返ってきた。
2年前に当時の国王夫妻を含む王族10人が死亡した「王宮虐殺事件」の首謀者が現国王だと、彼も信じているらしい。

一方、当のマオイストである28歳の女性組織の中央委員は、「国王が必要かどうかを決めるのは国民だ。制憲議会で国民が国王が必要だと決まれば、われわれはそれに従う」と言う。これは党のリーダーがよく使う表現と同じだ。
このあと、ルクム、ロルパを歩いて、さまざまなレベルのマオイストに会うことになるが、同じ質問に対しては、ほとんどのマオイストが同じ答えを返してきた。それに対して、一般の村人のほうが正直な心情を暴露する。

タルマレ村に着いて2日目の朝、マオイストの自治政府である同村“人民政府”が“見送り会”を開いてくれた。村人民政府メンバーが次々と、客である私たちにマリーゴールドの花輪をかけ、額にアビールと呼ばれる赤い粉をつける。このあと、彼らに見送られて、私たちは北に向かった。この日になって初めて、同行するマオイストは、これから私たちはルクム郡で開かれる郡レベルの人民政府樹立集会に向かうことを明らかにした。

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