ところが父が亡くなって、後継者に就任してみたら、いろいろな問題が生じてしまったのです。トップになって4年くらい経ったころ、組織に対して「何か違う」という違和感を覚えました。
父が言っていたことは、「二度と戦争はしちゃいけない。そのためにはやっぱり自立しなければいけないし、生きる力を持たないといけない。

少林寺拳法は、その生きる力というものを人のために使える、人のことが考えられる、そういう人を育てるために始めたのだ」ということなのです。そういうことを父はたくさん言ってきていたんです。これは、書物にもなっています。

昭和22年に創始された少林寺拳法ですが、組織として急速に大きくなるのが(昭和)40年を過ぎてからになります。ちょうど日本の高度経済成長期と同じ時期なのです。こういう言い方をすると誤解を招くかも知れませんが、少林寺拳法を普通の武道のように競技性を重視したスポーツとして捉える傾向や、魅力的な技術を中心とした少林寺拳法の「楽しみ」というところに価値観をおく人が増えたんです。

そこに「教え」があるとか、「目的がある」と言っても、それを「痛みとともに理解」するという感覚が薄いような...。それは少林寺拳法に携わっている人だけに限らないことなのですが、父のように本当に心を痛めて、心臓が痛いと思うほどのことをたくさん感じる部分というか、そういう思いを持っている人というのはすごく少なくなっているのではないか。そんな危機感を感じているのです。
(続く)
宗由貴(そう・ゆうき)
1957年、香川県生まれ。1980年、少林寺拳法の創始者である、父・宗道臣の後を継ぎ、少林寺師家第2世宗道臣を襲名。2000年、少林寺拳法グループ総裁に就任。

少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第1回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第2回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第3回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第4回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第5回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第6回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第7回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第8回
少林寺拳法グループ総裁・宗由貴 自分らしく生きたい 第9回

 

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