現在イラク北部とクルド自治区を取材中の玉本が、イラク国内の日常の息吹を日誌と写真で伝える集中連載
 (写真右:事故の際の救命訓練など、講義は2日間にわたった。)
イラクでは治安悪化で外国メディアの多くが国外に退避した。残って取材を続ける大手のメディアも取材現場に出ることは容易ではなく、イラク人現地スタッフが取材や撮影をするようになった。

武装勢力は、外国人記者だけでなく、イラクのメディアも攻撃対象にし始めた。私たちが目にするイラクニュースの映像のほとんどは、彼らが命を張って撮影してきた映像なのだ。

最前線で働くイラク人記者たちのための「ジャーナリスト安全講座」(主催・国際ジャーナリスト連盟・IFJ)が3月末にアルビルで開かれた。
バグダッド、モスル、ナジャフなどイラク各地から集まった記者はおよそ80人。英国の警備専門会社から英国人講師が派遣された。

戦闘に巻き込まれない方法や、誘拐から身を守る心構えなど、記者たちは真剣な表情でメモをとる。講習会を呼びかけたジャーナリスト、シェルコ・ハビブ(48)さんは「ジャーナリストは現場に迫ることは必要だ。しかし、命を落としてはいけない」と話す。

(写真右:取材中、武装勢力に切り裂かれた左掌を見せる、アメリカABCテレビのイラク人カメラマン。)
アメリカABCテレビのイラク人カメラマン、アラディン・サアドさん(32)は、バグダッド市内で撮影中、武装勢力に取り囲まれ、左手掌をナイフで切り裂かれた。

それ以来、ABCの記者証は靴下のなかに入れて行動している。
「仲間4人が取材中に死んだ。でも僕はイラク人だ。ここに残り、世界にイラクのいまを伝える」と言う。
武装勢力からは「占領軍の手先」と狙われ、米軍には「テロリスト」と間違えられる。いまの「異常な状況」の中で取材を続ける記者たちの苦悩がかいま見えた講習会だった。

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