現在イラク北部とクルド自治区を取材中の玉本が、イラク国内の日常の息吹を日誌と写真で伝える集中連載

先日、あるイラク人女性と1年ぶりに再会した。
カマル・アブドゥラさん(40)は、モスル・ニナワテレビ局の職員。昨年、同局を取材した際、案内してくれたのが彼女だった。
(写真右:ニナワテレビ職員カマルさん(写真右)と1年ぶりに再会。武装勢力の脅迫を受け、1ヶ月間自宅から出ることができなかったという。 (アルビル市で))
イラク北部最大の都市モスルは、つい最近まで街の半分が武装勢力の支配下におかれていた。
「もう会えないと思っていたわ」うれしそうに言うカマルさんと、肩を抱き合った。
モスルでは、いまも武装勢力が活動を続け、米軍や米軍協力者だけでなく、メディアで働く者たちも攻撃対象になっている。
ことし2月、ニナワテレビはイラク軍や警察に拘束された武装勢力メンバーの尋問ビデオの番組を放送した。
「(武装)組織から払われるお金が欲しくて、米兵を殺した。後悔している」
こんな証言が続く番組は、市民に大きな反響を呼んだ。

(写真右:当局の尋問に答える武装勢力メンバー。尋問番組はニナワテレビで放送され、反響をよび、イラクテレビ、アル・イラキーヤで毎晩全国に放送されることになった。(アル・イラキーヤ・「正義の手におちたテロル」番組画面より))
その直後、カマルさんの同僚女性アナウンサーが拉致され、殺害される事件がおきた。
「番組への報復です。私の自宅にも男たちがやってきて、脅迫文を置いていきました」
殺害事件後、同局には米軍の装甲車とイラク国家防衛隊の兵士が配置され、局員の一部は家族を別の町に転居させた。
旧フセイン政権下、他のメディアと同様、ニナワテレビの番組も当局の厳しい検閲を受けた。
昨年、同局を訪れた私に、これからは自由な番組づくりができる、とカマルさんは話していた。
しかしいま、局員は武装勢力に狙われている。
「また怯える日が戻ってきた」カマルさんは不安そうな面持ちで言った。
イラク軍当局の発表では、沈静化の兆しを見せていた武装勢力の活動は、4月に入り、再び活発化したという。
「また絶対に会いましょうね」
カマルさんはそういって、私の手を固く握った。