DSCF0120apn【ある地方都市の夜明け前。日が昇る前の市場に人びとが集まってくる】
早速、警察署に駆け込んだ。
宿泊の事情を説明して、当直の責任者に聞いてみた。

「今夜1泊だけ、近くのゲストハウスに泊まりたいんですが。今、夜10時だから、朝6時までの8時間だけです。許可をもらえませんか」
その責任者は、私の話を聞くよりも、私の身分チェックを始める。
パスポートのチェック、どの船でこの町に着いたか。
この町に何泊するのか。

誰を訪ねる予定か。
私の問う宿泊先の件はそっちのけで質問を続けてくる。
「君は外国人らしいけど、本当はこの町で生まれたんだろ。どうして戻ってきたんだ」
その一言で、私は固まった。

船の中で話した冗談をどうして彼は知ってるのか。
しかもその話を真に受けて。
船上での話の内容を誰かが警察に通報したに違いない。
その速さに驚く。

と同時に、ちょっと怖さを感じてしまった。
いつも誰かに見張られているのだな。
のどの奥が乾いてくる。

ゴクンと、意識せずにつばを飲み込む。
あらためてこの国が軍事政権の国であることを思い知らされた。
~続く~

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