軍の車が乱暴な運転をしているのを運転手があてこすったように聞こえたのだ。
「おい!誰がそんなことを聞いた?どこの国の車かと聞いているのだ」

「はっ!日本製の‘レンクル(ランドクルーザー)’であります」
「おい!あんな行儀の悪い日本車は、 今後一切ハンドルを全部はずして左側に付け替えさせてしまえ」
最高司令官の‘お言葉’を、一字一句逃すまいと、髪の長い女性秘書がノートに速記を取っていく。職務に忠実な彼女は「いつまでにでしょうか?」と尋ねた。

「1年以内に、すべての日本車のハンドル全部付け替えさせろ!それまで日本車の使用は一切禁止だ。輸入も禁止だ。わかったな」
この将軍様のマルスム(お言葉・教示)は朝鮮では絶対である。すぐに幹部たちに伝えられ、文書になって公式化され津々浦々の党と行政機関に配布された。

しかし、日本車を輸入して儲けているのも、日本車を保有しているのも、軍や党の機関と特権階層たちである。
手に入れた高級日本車に乗れなくなるのは一大事だ。左ハンドルに変えるなんて金がかかってしかたがない。

それで、特権幹部たちは相談して一計を講じることにした。
公用で使っている日本車が余りに多すぎるので、猶予の期間がもう少し必要だと、将軍様に提議書を上げることにしたのだ。その効果があって、ハンドルの付け替え期間は3年に延ばされた。

春になり、夏になり、そして秋になる頃には、誰も日本車の規制の話をする者はいなくなった。
日本からの中古車輸入も第三国を通じて再開されたという。

「これでもう大丈夫だろう。我が国で3年後の約束といえば、ないのも同じだからな」
特権幹部たちは、安心しきってこんな風に言い合っているという。
(資料提供 2007年3月 リ・ジュン 整理:チェ・ジニ)

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