駅前でアイスキャンディーを食べる若い兵士。食糧の不足について不満を口にした。(2008年10月沙里院市 シム・ウィチョン撮影)

駅前でアイスキャンディーを食べる若い兵士。食糧の不足について不満を口にした。(2008年10月沙里院市 シム・ウィチョン撮影)

 

現地報告 黄海道/平壌江東郡は今

やせ細る兵士、混乱する人民生活 3
報告:チャン・ジョンギル/シム・ウィチョン 整理・解説:石丸次郎

2 シム・ウィチョン記者の黄海道リポート(承前)
■食糧問題と兵士たち
チャン・ジョンギルの撮影した写真にもあったが、黄海道地域でも、若い兵士たちの困憊ぶり、軍隊組織を覆う食糧問題の深刻さが、シム記者には目についたようである。

撮影されたビデオには、兵士が農作業に精を出す姿が捉えられており、兵士たちに話しかけて食糧事情についてもうまく話を聞き出している。また、息子が軍病院に勤めているという老人との会話には、軍内で栄養失調が蔓延しているというショッキングな話が出てきた。
次に紹介するのは、二〇〇八年八月末に海州の市場で交わされたある老人との会話である。この老人の息子は軍病院である五一号病院に勤める軍人だという。

老人:病院に行ったが栄養失調者がどれくらい多いことか。

シム:兵士たちの?
老人:そう。その栄養失調になった兵士を将校たちが面倒を見ることになっている。といっても全てを面倒見るわけじゃなく、副食物なんかを食べさせる程度なんだと。

だから私が息子に「おいおい、そんなことで栄養失調が治るんかい? こんなのはまったくの形だけのことに過ぎないんじゃないのか」と言うと、「はい。でも、形だけのことでもやらないでどうします、他に方法がないのに」と言うんだ。
副食物と言っても、国から支給されるんではなくて、全部が将校たちが自腹を切って食べさせているんだと。

シム:二縲恷O食しっかり食べたところで良くなるんですかね。
老人:無理だよ。そんなことで解決できるはずがない。

シム:五一号病院は四軍団ですね。栄養失調の兵士がずいぶんたくさん入って来るそうですね。
老人:多いよ。その五一号から一五九号病院が分かれたので、四軍団の病院は二つなんだ。
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