シム記者とチャン記者の報告は、今年春からの北朝鮮経済の混乱と食糧問題の発生を予兆させるに十分なものである。
韓国との関係を冷却化させたことによって、金剛山(クムガンサン)・開城(ケソン)観光収入約五〇億円が消えた。開城工業団地からの収益も減少すると思われる。

韓国からほぼ毎年四〇縲恁ワ〇万トン受けていた食糧援助、及び化学肥料援助を、金正日政権は昨年に続いて受け取りを拒否する構えだ。
国際金融危機の影響も出てきている。北朝鮮の外貨収入の多くは、鉄や銅などの鉱物資源や魚介類など、天然資源の切り売りなのだが、金融危機の影響で国際価格が暴落している。

外貨収入の急減は食糧の確保に影響し、政権にとって優先度の高い軍、軍需産業、国営鉱山や、特別待遇の平壌市への供給が逼迫することになる。すると、体制維持の生命線であるこれらの機関や都市になんとしても食糧を供給しようと、農村からの収奪が一段とひどくなるだろう。
さらに二〇〇七年頃から始まった市場に対する統制は、今年さらに厳しさを増すものと思われる。商売行為でなんとか食いつないできた民衆の暮らしに大きな混乱をもたらすことになるだろう。

このように、今年の北朝鮮経済はプラスの材料は皆無で見通しは極めて悪い。
このままでは、収穫の端境期に入る春頃から食糧価格が高騰し、そこに市場統制による混乱が加わると餓死者発生という事態が起こる可能性もあると思われる。
(この稿、おわり)

トウモロコシの収穫作業に来ていた空軍の兵士。(2008年10月クァイル郡 シム・ウィチョン撮影)

トウモロコシの収穫作業に来ていた空軍の兵士。(2008年10月クァイル郡 シム・ウィチョン撮影)

 

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