■録音取材2  
銀泉(ウンチョン)郡の住民たち。二〇〇八年九月。聞き手シム・ウィチョン。
黄海南道銀泉郡当局は、銀泉郡縲怏ゥ海北道黄州(ファンジュ)郡の間を流れる川の渡し船の「船着場」を閉鎖した。一〇月一〇日の党創建記念日の祝日を前に、この一帯に唯一つしかない重要な交通手段である船を止めて、地域の市場間の物流が活発になることを阻止しようとしたのである。

記者:あそこにある「取締り検問所」と書かれてる所では何を取り締まるんですか?
男性:この辺りの食糧を運び出すのを取り締まるんだよ。

記者:食糧の取締り? じゃ、ここから南浦(ナムポ)や松林(ソンリム)に運ばれて行く物を取り締まるんですね。
男性:そうだ。

記者:昨日船着場に行ったけど、一〇月一〇日まで船を出せなくしてましたよ。だから、川の向こう側の、黄州郡の人たちはやたら大騒ぎしてましたね。「黄海北道の他の所は静かなのに、何で銀泉郡の側では統制するんだ」って。

男性:銀泉郡は特別だよ。民衆を苦しめてる。
記者:まったく、どうして船着場閉鎖なんてことするのか理解できませんよ。便利だからって渡船場を作ったんでしょ。船が出せないなんて、これから大変ですよね。

女性:ええ? 船着場から船が出なくなるの?

記者:一〇月一〇日までは。昨日までは船が出てたのに、今日からはまったくダメだそうです。
女性:じゃ、どうしろっていうのよ。

記者:小さな船で渡るしかないんじゃないんでしょうか。だから小舟渡しは軒並み値上がりしてましたよ。
女性:いくらなの?

記者:伝馬船が、一〇〇〇ウォンでしたね。
女性:チェッ。どこまで苦しめりゃ気が済むのよ。

記者:ほんとに、便利なものはそのままにしといてくれりゃいいものを。
女性:あの船が出ないと、穀物が運べないじゃない! まったくもう......。

記者:どうせ、取締りをするんなら、穀物だけを持っていけないように取り締まればいいものを、船まで出せなくして。それに、渡し船が二隻しかないのに、もう一隻は軍人たちが使ってました。
女性:人民の利便性なんてこれっぽっちも考えていないんだから。

記者:なんもかんも、わざわざ不便にするんですからね。
女性:人民を苦しめることばっかしだ。人民のために何かしてくれたことあった?
(つづく)

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