バグダッドのタハリール広場に「政府もマリキ首相も嘘つきだ」とシュプレヒコールが響く。イラク戦争から8年が経ったが、市民の生活状況はいまも厳しい。(3月18日 撮影: 玉本英子)

 

◆イラク戦争から8周年~市民の怒りも限界に

玉本英子 現場日誌
バグダッドでは政府を批判するデモが毎週続いている。
今年2月のエジプトでの反体制デモへの連帯行動をきっかけに、市民が毎週金曜日に市内中心部のタハリール広場に集まるようになった。

デモはエジプトと同じように交流サイト、フェイスブックなどネットを通じて呼びかけられ、参加者が次第に増えていった。
これまでにもデモや集会はあったが、ほとんどが政党などの動員によるものばかりで、市民による自発的な反政府デモが広がったのはエジプト政変以降のことだ。

18日、タハリール広場には1000人を超える市民らが集まり、政府への抗議の声を上げた。
「電気がない、水がない」と手書きのプラカードを手にしたムスタファ・フセインさん(40)は、ネットでデモを知り、毎週参加するようになった。

「夜明けから夜遅くまで車の修理の仕事をしているが、4人の子どもを養えない。もう限界だ」
生活状況がすぐに変わるわけではないが、とにかく声を上げ続けなければ、という思いで、今後も広場に集まり続けるという。

イラク戦争後の混乱の中で息子を失った母親たちが窮状を訴えていた。爆弾事件に巻き込まれて命を落としたり、当局に拘束されたまま行方不明となった市民は数知れない。(3月18日 撮影:玉本英子)

 

デモには女性の姿も目立つ。ナミール・イブラヒム(46)さんは昨年死んだ16歳の息子の写真を手にしていた。 息子は理由もわからないまま警察に逮捕され、刑務所で死んだという。
「なぜ逮捕されたのか、なぜ死んだのか、誰も何も説明してくれない。 少しでも情報が得られたらと毎週ここに来ている」
と涙ぐんだ。

数年前までは深刻な宗派抗争で引き裂かれていたイラク人。しかし戦争後の苦悩と悲しみは、誰もが直面してきた。 いま、広場に集まる人びとに宗派の壁はない。

広場でのデモに参加したムンタダル・ザイディ記者。ブッシュ前大統領に靴を投げつけたことで一躍有名になったが、イラク国内では批判されることも多いため、警護に守られていた。(3月18日 撮影:玉本英子)

 

デモには08年、イラクを訪れたブッシュ大統領の会見の場で靴を投げつけ、禁固刑を受けたムンタダル・ザイディ記者の姿もあった。
「イラク戦争開戦から8年が経つが、アメリカの占領は続き、政府は腐敗したまま。市民の状況は何も変わっていない。 私たちの友人である日本の人びとがイラクへの関心を失わないでくれたら嬉しい」
とザイディ記者は話した。
【バグダッド・玉本英子】