新宿ニコンサロンで「仮開催」された写真展では、金属探知ゲートが設置されて来場者の身体・持ち物検査が行われていた (2012年6月28日 東京・新宿ニコンサロンで/撮影:綿井健陽)

新宿ニコンサロンで「仮開催」された写真展では、金属探知ゲートが設置されて来場者の身体・持ち物検査が行われていた
(2012年6月28日 東京・新宿ニコンサロンで/撮影:綿井健陽)

 

◆12月に正式にニコンを提訴
私とニコンとの"関係"は、まだ終わってはいない。
新宿ニコンサロンでの写真展「仮開催」、大阪ニコンサロンでのアンコール写真展開催「拒否」に対して、私は正常な写真展を再びニコンサロンで開催し、写真家たちと写真を愛する人たちへの公式な謝罪、再発防止や損害賠償など、ニコンとの対話を通して解決したいと思ってきた。

しかし、ニコン側が対話に応じないことから、再び法的な力を借りて、ニコンの写真展中止理由を明らかにするつもりでいる。4人の弁護士による弁護団がつくられて、12年12月25日に東京地裁に提訴した。そして13年2月18日に第一回口頭弁論が開かれた。

今回の中止通告に限らず、日本では映画「靖国」「ザ・コーヴ」などの上映中止や、慰安婦問題に関する催しや講演が中止に追い込まれるケースがあった。
幸いにも私の写真展においては、沈黙をせずに声を上げ、協力してくれた支援者、ジャーナリスト、弁護士、韓国語通訳ボランティアたちと、共に考えて議論を重ねることができた。そして、ギリギリのところで写真表現空間を守り、何とか写真展を実現することができた。

写真家であれば誰もが、自ら撮影したテーマを完成度の高い作品として表現できるまで、撮影のための時間と努力を惜しまないだろう。そして、媒体や展示空間を通して写真を発表し、大衆の評価を受けてこそ、共感を形成する事ができる。

「重重」写真展はその後、北海道・札幌市内で開催され、今年2013年3月19日から4月18日にかけては、アメリカ・ニュージャージー州で市民による写真展と、ニューヨーク、フィラデルフィアなどで講演会が数回予定されている。また、東南アジアや朝鮮半島の日本軍「慰安婦」を撮り続ける日本の写真家たちとの合同写真展を企画して、参加の呼びかけを始めた。

「ニコンサロン中止事件」は、私個人だけの問題ではなく、ニコンとの単なる"トラブル"でもない。誰もが表現の自由を享受し、歴史的事実と歴史認識を共有し、またそれを自由に批評・議論できるような社会のあり方を求めて、私はこの"事件"の真相究明と解決に今後も努めたいと考えている。(原文は韓国語)

安世鴻
※月刊「創」12年12月号に掲載した原稿に、一部加筆・追加しました。
※安さんは写真展中止の真相を求め、ニコンを提訴中です。第二回口頭弁論が5月13日午後2時より行われます。
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特別手記『ニコンサロン写真展中止事件の顛末』(上)

安世鴻(アン・セホン)さんのインタビュー動画(05:47)


安世鴻(アン・セホン)さんの抗議の記者会見動画(56:49)

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