◇いわく付きの解体工事
ところが、地上9階・地下1階建て、述べ床面積2万平方メートルにおよぶ「世界最大」のボウリング場を解体するにもかかわらず、アスベスト除去工事の説明会は開催されないまま工事が始まろうとしていた。解体を請け負った竹中工務店グループの竹中土木は、近隣に簡単な工事のチラシを配っただけだった。しかもアスベストの飛散を心配した住民が説明会の開催を求めたが拒否された。

住民が懸念したのは各地のトーヨーボールの解体工事では必ずといってよいほどアスベストの飛散が問題になってきた経緯があるからだ。
2007年のトーヨーボール稲沢の解体工事について、愛知県は「適正だった」というが、実態はまったく違う。たとえば場内には吹き付けアスベストがいたるところに落下して散らばっていたのだが、そうしたアスベスト混じりだった場内の「残置物」はアスベスト対策なしで通常の産業廃棄物として処分された。

そもそも天井が盛大に落下していて吹き抜けになっていて、アスベスト除去のための密閉養生も容易ではない状況だった。同県によれば、板でふさいだというのだが詳細は不明で、工事中には強風で養生はしょっちゅう破れていた。

本来はクリーンルーム内で脱がなくてはならないはずのアスベスト対策のマスクや防護服を着たまま、廃棄物が入っているらしい袋を持って外に出てくる作業員もいた。

除去後マスコミに現場を公開したのだが、地元のテレビクルーが「ご覧ください。あれほどアスベストだらけだったのが、こんなにきれいになりました」とロケをした、すぐ上の鉄骨には、吹き付けアスベストの取り残しが見えていた。

筆者も現場にいて、呆れながらロケのようすを眺めていたのだが、ふと足下に吹き付けアスベストの取り残しが無数に転がっているのに気づき、分析しようと拾ったところで解体業者の幹部に腕をつかまれて奪い取られた。このように「適正」にはほど遠い工事だった。

また神奈川県大井町にあったトーヨーボールでも2010年5月の除去工事中にアスベスト粉じんを捕集する負圧除じん機の排気口から、本来なら検出されないはずのアスベストが1リットル当たり42本も検出される漏えい事故が起きている。住宅地での大気中のアスベスト濃度は、全国平均で1リットル当たり平均0.1本以下であり、その420倍以上ということになる。

あるアスベスト除去業者は「トーヨーボールは半ば廃墟化していて、(散乱した)アスベストだらけなので養生も困難。きちんとやったら採算が取れない可能性が高く、まともな業者なら手を出さないやばい現場、というのが業者のあいだでは有名な話でした」と明かす。
これほどいわく付きの物件なのだ。工事の安全性について、きちんとした説明を求めるのは当然だろう。
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