だが、竹中土木は12月13日には工事を再開すると宣言した。
最初の調査が不十分であることが説明会で事業者側によって明らかにされたにもかかわらず、結局その検証がされないままに工事を強行してよいわけがない。住民側は調査の不備をわかりやすく図示して竹中土木や大田区、太田労働基準監督署に再調査の要望などをした。

しかし、監視・指導権限を持つ大田区は「認定された調査機関が分析したのだから、アスベストの調査は適正におこなわれた」と調査自体がされていないとの指摘を完全に無視した意味不明の回答をした。この間いくつか大田区内のアスベスト問題を取材したが、同区は住民無視の姿勢が著しく、「つねに事業者は正しい」といわんばかりの対応を繰り返しているのが特徴的である。

竹中土木や監督署からは回答もなかった。それで弁護士に依頼し、竹中土木、大田区、大田労働基準監督署に対して、疑問点の説明と、工事の適法性が確認できるまでアスベスト除去・解体工事ををしないよう求める内容証明郵便を送ったり、区議会に徹底した事前調査の義務づけや国土交通省が実施していた自治体負担 なしの補助事業を使って専門家に依頼して現地の調査をしてほしいといった陳情もした。

だが、そうした活動もむなしく、さまざまな調査の不備を残したまま、住民を無視して工事が再開され、解体が実施されてしまった。
住民団体のブログには活動してきた住民が2011年4月の解体工事再開後にこう心情を吐露している。
〈はっきり言いまして、住民側の敗北だと感じています。
その理由は、いくつもありますが、大きく言うと、
1.法整備が十分でないこと(事前調査をしさえすれば、内容は問われないこと)
2.それをカバーするはずの行政のチェック・指導が働いていないこと、 認定された業者が出した結果というだけで、住民に指摘されても、データを読み、論理的に思考することは一切しませんでした。

アスベストにも、法律にも、行政にも素人な住民が2ヶ月で必死に勉強した知識も、行政は感心するだけで、そのような専門性を要求されるのは難しいと開き直りました。

本質を突いた(つもりの)住民の質問にも、まともに回答しませんでした。
適切に判断している、説明責任は行政ではなく業者にあるなどと表面的な対応に終始しました。

3.さらに、住民の代表として選ばれ、行政をチェックすべき議会も、一部の議員を除いて機能していないこともわかりました。
現在、問題となっている放射能の件も、同じにおいを感じています〉
もう1カ所の事例については次回紹介する。
(つづく)

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