◆攻撃は長期化か

ラジ弁護士:
イスラエル軍は住民、家族を破壊し、抹殺しようとしています。これまで犠牲者の中にハマスやイスラム聖戦のメンバーは6人から多くても10人ほどです。軍 事的な攻撃目標などないのです。他の犠牲者は一般市民で、その数は今のところ87人です。その数は時間ごとに増えています。

武装組織のメンバーたちの大半が地下にもぐって表には出てきません。だからイスラエル軍は彼らの家、農園、インフラを狙って攻撃するのです。そこに人がいようがいまいが構わないのです。住民の殺戮と負傷によって、住民に恐怖を植え付けようとしています。

それが、200万人が暮らすこの360平方キロの広さしかない狭いガザ地区で起こっているのです。ここは世界でも最も人口密度の高い地域です。イス ラエルはF16戦闘機や戦闘ヘリコプター、武装艦船を保有しています。それらで24時間、砲爆撃を繰り返しているのです。さらに、ある地域では地対地ミサ イルまで使用しています。

日中でも車は標的とされ移動もままなりません。夜に動くものは、車でもバイクでもすべて爆撃されます。夜間は、ガザ全体を麻痺に追い込もうとしています。不安のなか眠ることもできません。

◆不安に震えるガザ住民

ラジ弁護士:
今回の爆撃の前からガザ地区はすでに過酷な状況に置かれていました。これまで2度もイスラエルの激しい攻撃にさらされ、多くの建物が建て直されないままで した。封鎖によって、ガザは経済的にも社会的にも窒息状態に置かれています。その影響はあらゆるところに及んでいます。ハマスとファタハの連立政府が成立 したばかりですが、ヨルダン川西岸から新たな政府要人がガザへ来て業務を引き継ぐこともできません。

現在、イスラエル軍の地上侵攻についての噂が大きくなっています。イスラエルには大きな政治的な意見の分裂があります。もしイスラエル軍がガザ地区 に侵攻してきたら、多くのイスラエル兵が殺されます。今は空爆によって、ガザは「象が侵入した庭」のような状況ですが、イスラエル軍がガザに侵攻したら、 何千人というイスラエル兵が命を落とすことになってしまうでしょう。

一方、ガザ住民は少なくとも1万から1万5千人が犠牲になることが推定されます。イスラエル軍はガザに侵入すると泥沼にはまってしまうことを懸念 し、軍や諜報部門のなかには侵攻を望まない声もありますが、政府が圧力を加えています。しかもまったく仲介者がいません。(おそらくエジプトが仲介者とな りえたかもしれませんが)ハマスはエジプト政府に、「我々はあなた方と話をしたくない。イスラエルの側に立つあなた方を我々は信用しない」と言っている。 この事態は短期間では終わらず、長期化すると私は思います。何週間にもわたって、たくさんの血が流れ続けることになるでしょう。

ガザの住民はまだハマスなどによる抵抗を支持しています。イスラエルに対して激しい怒りを抱いています。またイスラエルを支持するアメリカやヨー ロッパなどの対応にも怒っています。イスラエルは2008-2009年、そして2012年もガザを攻撃しましたが、結局、何の罰も受けていません。ゆえ に、イスラエルはやりたいことは何でも自由に行動できると思っている、と多くのガザ住民は感じています。ここは法が支配する世界ではなく、強者の論理が支 配している世界なのです。一般市民を保護する基本的な法律さえ無視されているのです。

あらゆるガザ住民が不安に震えています。まったく展望が見えないからです。住民は苦しみ泣いています。事態がさらに悪化し、悪化の一途をたどることを私は恐れています。しかし日を追うごとに、状況は深刻化するばかりです。(つづく)

【土井敏邦】
| 次へ>>> ガザからの緊急報告(中)

【ガザ攻撃】
6月末、パレスチナ暫定自治区ヨルダン川西岸で行方不明になっていたイスラエル人の少年3人の遺体が発見され、イスラエル政府はイスラム原理主義組織ハマスの犯行として非難。今月初めにはこれに対する報復と見られるパレスチナ人少年殺害事件がエルサレムで発生。少年は焼き殺されたと報じられたことから、自治区ガザでは抗議が広がり、ハマスがロケット砲撃をおこなった。イスラエルはただちに報復を決め、本格的な空爆作戦を開始。爆撃は広範囲にわたりハマス幹部宅やハマスのロケット弾発射地点など1000か所を超え、女性や子どもを含む一般住民に多数の犠牲者が出ている。またハマス側も数百発を超えるロケット弾で応酬を続ける。ガザ攻撃は過去にも何度も起きており、2008-2009年にはパレスチナ、イスラエル双方の死者は千人にのぼる。その犠牲者の多くはパレスチナ住民だった。
----------------------------------------------------------------------------------

ラジ・スラーニ:1953年ガザ市生まれ。弁護士。パレスチナを代表する人権活動家、オピニオン・リーダー。1995年ガザ市で「パレスチナ人権センター(PCHR)」を創設。イスラエル占領時代、5年近く逮捕・拘留され、激しい拷問を受けた。長年の人権擁護の活動は国際的に高く評価され、ロバート ケネディ人権賞(1991年)、フランス人権賞(1996年)などを受賞。2013年12月、"第二のノーベル平和賞"ともいわれるライト・ライブリフッド賞を受賞。
土井敏邦(どい・としくに):1953年生まれ。ジャーナリスト。中東情勢などを中心に取材。1985年よりパレスチナ・イスラエルの問題にかかわり、現地での滞在を続けてきた。映像作品に『沈黙を破る』(2009年)、『飯舘村』(2013年)など。著書に『占領と民衆―パレスチナ』(晩聲社)、『沈黙を破る―元イスラエル軍将兵が語る"占領"』(岩波書店)などがある。