わずか数か月前まで、私たちと同じように携帯電話で友達と会話し、フェイスブック、ツイッターで日常のことを書き込んでいたシンジャ ルのヤズディの友人たち。先月、武装組織「イスラム国」はシンジャルを制圧、ヤズディ教徒への殺戮と迫害を開始した。イスラムへの改宗を迫り、受け入れい れなければ殺すと布告。たくさんの若い女性が連行され、行方不明となった女性は奴隷として売られた。21世紀が突然、中世の暗黒時代に逆戻りしてしまっ た。2年前に取材したイラク北部のシンジャル地域は、いま「イスラム国」によって支配されている。写真に写っている町も コミュニティも崩壊した。写真で笑顔をのぞかせる人びとの姿は、もうそこにはない。この地のヤズディ教徒たちの多くが住む場所も故郷も失い、難民となって 離散している。【報告：玉本英子】
（メディアでは「ヤジディ」と表記されていますが、本稿では本来の発音に近いヤズディとします）
第６回◆戦禍と混乱のなかで
2012年に取材した当時はニナワ県シンジャル周辺にはイラク軍が展開し、厳しい検問を各所に設けていた。米軍のイラク撤収後もスンニ派武装勢力が活動し、イラク軍と戦闘を繰り返していた。写真は検問中のイラク兵。2012年撮影。今年６月にはニナワ県の多くの部分を「イスラム国」が制圧、イラク軍は敗走した。(2012年)
ニナワ県シンジャル郊外 シバ・シェクイドルはフセイン政権時代に強制移住させられた人びとが暮らす。行政機構の空白地帯でもある村は、ニナワ県、クルディスタン地域政府から予算が下りず、医師がいない診療所には、薬剤師が診察にあたっていた。(シバ・シェクイドル・2012年)
ニナワ県シンジャル郊外、シリア国境近くの町をまわる。商店街の店主は、これまでシリアから衣類などを仕入れることが多かったが、シリアが内戦に陥ると、それもなくなった。国境を行き来する商売人も激減した、と話した。(2012年)
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