ここで勘違いしてはいけない。「ロヒンギャ問題」とは「人身売買問題」ではなく、およそ半世紀続いたミャンマー軍政の政策が生み出した構造的な差別問題の結果である。だが、文中にそのことは触れられていない。また、海外メディアの多くがそうであったように、CNNは報告の中で、ロヒンギャ・ムスリムを「ロヒンギャ族」(ヒューマン・ライツ・ウオッチも)と記述をしている。しかし、これは誤解を生む報道である。

それは、そもそもロヒンギャたちが求めてきたのは、「民族としてのロヒンギャ」ではなく、「ムスリムとしてのロヒンギャ」だからである。私がこれまで出会ってきたロヒンギャたちは、数少ない例外を除いて、イスラームを信奉する「ロヒンギャ・ムスリム」というアイデンティティを強く意識していたからである(「ヒューマン・ライツ・ウオッチはその英語の報告書で、”Rohingya Muslims” 〈ロヒンギャ・ムスリム〉と ”ethnic Rohinya”〈ロヒンギャ民族〉を混在させている)

私がロヒンギャと呼ばれる人びとの存在を知ったのは、軍政ミャンマーの取材を始めた1993年であった。前述したように、ロヒンギャ難民の問題は1993年をさかのぼる1978年頃から始まっていた。「ロヒンギャ問題」の歴史は古く、2015年になって突然、起こったわけではない。3回へ
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