ロヒンギャが暮らす国内避難民キャンプの管理事務所。独立の英雄「アウンサン将軍(アウンサンスーチー氏の父親)」と前の独裁者「タンシュエ上級大将」が掲げられていた。(2015年11月撮影:宇田有三)

ロヒンギャが暮らす国内避難民キャンプの管理事務所。独立の英雄「アウンサン将軍(アウンサンスーチー氏の父親)」と前の独裁者「タンシュエ上級大将」が掲げられていた。(2015年11月撮影:宇田有三)

これが2015年11月に、キャンプ内の管理事務所を訪れた時の写真です。

国内避難民キャンプの管理事務所の中に掲げられている写真は、独立の英雄「アウンサン将軍(アウンサンスーチー氏の父親)」と前の独裁者「タンシュエ上級大将」です。これには驚きました。

2011年テインセイン大統領の下民政移管したミャンマーは、軍の最高司令官はアウンミンフライン上級大将になっていました。形だけの民政移管といっても、すでに5年経過していましたし、スーチー氏が率いるNLD党が野党として発言力を持っておりました。それでも現地の人びとは、軍部の実権はタンシュエ上級大将が握っていると思っていたようです。だからこそタンシュエ上級大将の写真を飾っているのです。それほどロヒンギャたちは軍部によって抑えつけられていたのです。

そこで私が感じたのは、もしこの写真を一般のビルマ人やラカイン人が見たら、軍の暴力で国民を抑え込んでいたタンシュエ上級大将の写真を飾っているということで、さらにロヒンギャたちが新たに差別に晒される理由になるのではないか、と。

キャンプ内は、一見すると穏やかに見えますが、それは軍の力を背景に抑えつけられた平穏さです。でも、これ以上抑えつけられる状況が続くと、徐々に高まった不平や不満は、国内の一部の武装勢力や海外のテロリストグループ、さらに国内外の麻薬組織と結びついて(実際、起きつつあります)、爆発する恐れもあります。それがまた、社会の平穏を乱すロヒンギャとして報道されることも懸念されます。

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