◆幼い女児が苦しみながら息絶えた
4月4日朝、シリア北西部イドリブ県ハーンシェイフンで空爆があり、100名以上が死傷した。現場の被害者には皮膚の変色や嘔吐などの症状が出ており、化学兵器が使用されたと見られ、神経ガス、サリンの疑いも出ている。空爆直後にハーンシェイフンに入り、取材を続けてきたシリア人記者、オマル・ナジダッド・ハジ・カドル氏(30)は、7日夜(日本時間)に現地で緊急電話インタビューに答えた。(玉本英子)
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4月7日、化学兵器攻撃に反対する集会に集まった住民。化学兵器による虐殺を非難するプラカードを掲げている。(シリア・イドリブ県ハーンシェイフン。オマル・ナジダッド・ハジ・カドル撮影)

◆化学爆弾はどのように投下されたのですか?
オマル記者: 空爆があった時、私は町の外にいました。住民たちによると、朝7時頃、ハーンシェイフンの北部地区で空爆があったとのことです。通常の空爆に続いて、化学爆弾が投下されたといいます。シリア政府軍が、スホーイ-22(Su-22)戦闘機で化学爆弾を落としたという、多くの住民の目撃証言があります。

ハーンシェイフンでの空爆の被害者。医師は「化学兵器によるもの」と話す。(4月4日イドリブ県サラキッブの病院にて地元医師撮影)

◆被害者の状況は?
オマル記者: 私が町の病院に到着した時、現場は騒然としていました。多くの人びとが、呼吸困難や嘔吐で苦しみもがいていました。被害者の皮膚が黄色く変色していました。化学爆弾が使われたからだ、と皆、話していました。医師のひとりが女児の赤ちゃんを懸命に救おうとしていました。そばにいた父親は回復を信じていましたが、1時間後に赤ちゃんは息を引き取りました。たくさんの人びと、男性、女性、子どもたちが亡くなりました。化学爆弾投下から数時間後にも空爆があり、この病院も被害を受けました。

化学兵器が使用されたと見られるイドリブ県南部のハーンシェイフン。米軍が巡航ミサイルで攻撃したのはシリア軍戦闘機が爆撃の発着場とされるシャイラート基地(地図作成:アジアプレス)

ハーンシェイフンで取材を続ける地元記者のオマル・ナジダッド・ハジ・カドル氏(30)

◆なぜ、この町で化学兵器攻撃があったのでしょうか?
オマル記者:
ここは反体制派組織が支配する地域のひとつなのは確かですが、なぜこの町に化学兵器攻撃があったのか私には分かりません。他の国の空軍の標的になるような場所もありませんでした。

◆反体制組織が化学物質を貯蔵し、そこに爆弾が落ちたのではという報道も出ていますが?
オマル記者:
武器弾薬を貯蔵した格納庫や施設などもなかったのです。化学兵器攻撃が起きてから3日間、ずっと町にいましたが、武装グループが町を統制しているような姿も見ることはありませんでした。(つづく)

化学兵器と見られる爆弾が炸裂した現場で、塵や爆弾の破片のサンプルを取る地元医師。(4月5日シリア・イドリブ県ハーンシェイフン市内。オマル・ナジダッド・ハジ・カドル撮影)

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