帰還の権利を訴える抗議デモ「帰還の行進」の日、イスラエルの境界を眺める親子(2018年4月・ガザ地区撮影:古居みずえ)

◆緊迫するガザ地区から

イスラエルは5月14日に建国記念日を迎えるが(ユダヤ暦では4月18日から)イスラエルにとっては建国記念日であっても、パレスチナ人にとっては民族の「災厄」としていまも心に刻まれている日だ。

1947年の国連決議は、以前からパレスチナの地に住むアラブ人に43%、後から移住してきたユダヤ人に57%の土地を与えるというものだった。

アラブ・ユダヤ両対立のなか、1948年にユダヤ側はイスラエル建国を宣言した。建国宣言を受け、第一次中東戦争が勃発、 およそ70万人以上のパレスチナ人が故郷を追われ、離散難民となった。

このためパレスチナ人は、その翌日を「ナクバ」と呼んできた。アラビア語で「大災厄・大破局」を意味する言葉だ。

アメリカのトランプ大統領は、5月14日にテルアビブのアメリカ大使館をエルサレムに移転することを決めたため、パレスチナ人の怒りに油を注いだ。

故郷の占領と分断の象徴的な日としてパレスチナ住民の心に刻まれる、ナクバの時期に大使館を移転させるアメリカ。パレスチナ人の思いは複雑だ。

その70周年目の「ナクバ」が明後日に迫った。イスラエルとの境界での緊張が高まっている。私が取材中のガザ地区でも朝からイスラエル軍のドローンの飛ぶ音がひっきりなしに響く。

イスラエルの境界沿いではパレスチナ人による「帰還の行進」抗議デモが毎週続いている。ガザに住む長年の友人で主婦のスヘール(54歳)は3月30日の土地の日に「帰還の行進」に参加した。スヘールは「ガザの経済状況はとても悪い。人々はすべてを失った。今は何も失うものはない。だからイスラエルの境界に行くんだ」と話した。

今回の米大使館移転に反発するパレスチナ人は、14日、15日と大規模な大衆デモを呼び掛けており、「米大使館エルサレム移転」があらたな火ダネとなり衝突の拡大が懸念される。
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