◆国際機関も認める疾病を外すのか?
今回の専門委員会で懸念されるのは、ほかの同様事案よりも対象疾病を減らすようなことが起きないか、ということだ。
日本で労災の対象になっている石綿関連疾患は、石綿肺、中皮腫、肺がん、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚の5疾病。一方、国際的には、2014年に改訂されたヘルシンキ基準で、卵巣がん、喉頭がん、後腹膜繊維症の3疾患を追加。世界保健機関(WHO)の附属機関、国際がん研究機関(IARC)も喉頭がん、卵巣がんについて石綿関連疾患と認めている。
堺市と同様に石綿飛散事故が起き、被害発生時の対応について検討した東京都文京区や神奈川県藤沢市では、国際的に認められたこれらの石綿関連疾患(石綿肺除く)について、対象疾病と認める(藤沢市)か、対象と明記まではされていないものの除外していない(文京区)。少なくとも対象疾病をせばめてはいないことになる。
堺市でも、レントゲン読影など健康管理に踏み切る以上、なんらかの石綿関連疾患の発症があった場合の対応も定めざるを得ない。そんな事情から対象疾病について検討が始まった。
しかし、本質的に責任を極力逃れようとしがちな行政の体質からは、形式的な読影で安心を“演出”できればよいとの思惑が働くこともあろう。
残念なことに4月13日の初会合では、委員から対象疾病について当面労災と同等とする可能性について言及もあった。そのほうが委員会としてはラクができるのはたしかだろう。
石綿肺のように、高濃度ばく露でしか起きない疾患は問題ではないものの、ここまでなら大丈夫との「しきい値」のない発がんリスクに関連し、国際的に石綿関連疾患と認められた疾病について除外するようなことがあってよいのだろうか。行政の手抜きやずさんな発注などにより、石綿ばく露を強いられたこうした事案において、単に労災の基準だからといって当事者や保護者の納得が得られるわけがない。
まして、先行する2つの自治体で、少なくとも除外まではしていない以上、堺市がそれに踏み切った場合、国際機関が認めていることから科学的に説明できない状況に追い込まれるのは目に見えている。当事者感情からも許されまい。
5月25日に対象疾病の選定などを議論する専門部会が開かれる予定で、市は年内に元園児や保護者に説明会を開催する方針。3月の市議会で石綿対策の「ギアを一段上げる必要がある」と永藤英機市長が発言したばかりだが、堺市だけは対象疾病を削って早くもブレーキを掛けることになるのか。今後のゆくえを注視したい。























