
北朝鮮で「基金」への寄付行為が奨励されている。金正恩政権はコロナ・パンデミックを機に、個人の経済活動への強力な統制を始めた。しかし、最近はトンチュ(金主の意、新興富裕層)らが不法な経済活動で稼いだ大金を国家へ寄付することが賛美されているという。さらには、寄付をすると証書が発行され、不法行為への免罪符になっているそうだ。この矛盾は一体何か? 4月下旬に咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)郡と両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の取材協力者が伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン)
◆寄付の目的「英雄に対する人民美風を作ること」
北朝鮮の官営メディアには、「金日成・金正日基金」が度々登場する他、「教育後援基金」や「保健保険基金」、「炭夫後援基金」などの基金が確認できる。4月25日は建軍節(朝鮮人民革命軍創建記念日)だった。複数の取材協力者によると、この日を機に人民軍への基金を通じた寄付が督励されているという。
茂山に住む取材協力者A氏はこう伝える。
「外国に行って死んだ(ロシア派兵で戦死した)軍人のための追慕館を平壌に建てるため、党員や労働者は自主的に支援事業をしろと党組織から指示が下りてきた」
支援事業とは、企業や人民班ごとに軍隊や重要建設現場へ豚肉や食糧などを供出することを指す。食糧や物資が慢性的に欠乏する軍隊や建設現場を支援するという名目で、住民に半ば強制的に供出させる方法で、北朝鮮では従来から行われてきた。A氏は、「軍人や戦死者の家族へは物資や食糧の支援を期限や内容を決めずに行うようにしている」と従来のやり方に触れつつ、新たな動きについてこう語る。
「基金を通じて現金を出す人もいる。寄付すると、党組織から証書をもらえる」
「証書」には、誰がどこへいくら寄付したかが書かれているという。また、この制度について「党が要求しているのは、金が不足しているから寄付せよということではなく、国のために命を懸けた英雄と軍人に対する社会的な美風を作ることだ。そのために、党員が先頭に立って社会に浸透させよと指示している」と説明する。

◆恵山では10人以上が1000~5000ドルも寄付
恵山でも建軍節を機に、多くの住民が支援事業に応じたという。さらに、恵山に住む協力者B氏は「基金に寄付をして証書を受け取った人が10人以上いるそうだ」と、具体的に次のように伝えた。
「寄付したのは、企業の生産物販売責任者として働くトンチュが大半だ。祖国のためと事あるごとに支援している。市病院医薬品管理所長、鋼鉄工場の労報物資管理部員、貿易局の輸出入担当部員、電子技術奉仕所所長らも金を出した。他にも食堂の責任者、商業管理所の運輸隊の運転手、一般人も数名いた。
出した金額は1000から5000ドルの間で、教育後援基金、金日成・金正日基金、祖国保衛基金などに寄付し、証書を受け取ったそうだ。最近は、誰も彼も証書を一枚は手に入れようという雰囲気だ」
※労報物資:国家が配給や労賃以外に追加で労働者に褒賞として支給する食料品や酒、タバコなどの物資のこと。
※祖国防衛基金については、官営メディアで確認できなかった。
このような大金を、一個人がどのようにして作ることができたのだろうか?























