◆屋上にあえて設置せず大事故に

とくに今回の事例では発電機の設置場所について、「発電機が屋内に置かれ、1台はあえて1階の屋内に置かれ、自然換気が不十分だった。そこから建物内を通じて上階や隔離養生内に一酸化炭素が流れていった」(同監督署)と説明。

同監督署は、「解体途中の事故ですから、作業再開時にうちとしてもそのままゴーサインを出したわけではない。同社は(発電機の設置場所を)自ら『屋上です』と(作業計画で)変更した」と明かす。当初から屋上に設置可能だったにもかかわらず、それをおこたった事故という見解だ。

ちなみに搬送された作業者は、3次から5次までのいわゆる“一人親方”も含めた下請けだったが、“1人いくら”で集められており、現場責任者かつ石綿作業主任者として「職長が指揮する立場であった」(同監督署)として、事実上の“みなし派遣”(労働者派遣法第45条)と扱い、同社の安衛法違反との判断になっている(建設現場の業務での派遣は原則禁止)。同社は石綿除去の2次下請けだが、1次下請けが問題のあった作業時に現場にいなかったことから、同社の関与が「形式的だった」(同)として、事実上、現場を指揮していたのは2次下請けのジョイントだったとして、同社が責任を問われることになった。

6月29日午後に同社に連絡したが、担当者不在で事実確認ができなかった。

吹き付け石綿を使用した建物の解体ピークは2028年度と推計され、もうすぐだ。石綿除去が増加するが、同監督署は「危険を推して作業しなきゃいけないわけではない」として、今回のように屋上まで発電機を移動するのが大変などと、ちょっと“手を抜く”行為が命の危険につながるとして、安全確保の重要性を訴える。

また、同監督署は今回のような手抜き防止のため、「元請け業者や石綿除去の1次下請けが適切なチェック機能としての役割を果たす必要がある」とも指摘している。

元請けや1次下請けが適切な管理をすべきとの前提で気になるのは、千代田区への届け出とともに提出された作業計画に発電機の設置場所が記載されていなかったことだ。同区が所管する大気汚染防止法(大防法)では、労働者の保護は対象外のため当然ではある。だが実態として監督署と環境部局に同じ資料が提出されるのが通例のため、同監督署に対する届け出資料でも記載がなかった可能性がある。

さらにいえば、労働者保護を目的としているはずの安衛法石綿障害予防規則(石綿則)の届け出義務でも、発電機の設置場所について記載を求めていない。もっとも今回送検されたのは届け出が不要な仕上塗材の除去作業であり、仮に届け出義務があったとしても防げなかったかもしれない。

もちろん元請けや1次下請けが適切な管理をすることは大前提だ。しかし石綿の事前調査結果と合わせて作業計画の報告・届け出や発電機設置場所の記載義務があれば、今回のような“手抜き”がよりしにくくなって、防げた可能性はさらに高かったのではないか。延々と同じことが繰り返されている状況からは、すべて末端の事業者の責任として押しつけている現状もおかしいのではないか。より上位の事業者が責任を負う仕組みが本来必要のはずだ。

【関連資料】アスベストによる労災などの請求・認定の推移など

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