クルディスタン 山をおりるとき~(3) 写真・文 玉本英子

【パンを焼く男性兵士。ゲリラに男女間の区別はない。女性兵士も前線で戦う】

けわしい山々に囲まれたゲリラキャンプは、自由に食材が入らない。野営小屋での夕食は薄くて硬いパンとジャガイモのフライばかりだ。
「毎日同じもので飽きないの?」とアルジンに聞くと「ポテトスープ、ポテトフライにポテトサラダ。見た目を変えれば、味も違うように思えるのよ」と笑った。

アルジンは仲間と一緒に撮ったという写真を見せてくれた。写真に写ったひとりつとりを指さしながら言う。
「みんなシェヒッド(戦死者)なの」

ゲリラの命ははかない。カラシニコフ銃とロケット砲で戦うゲリラに対し、トルコ軍はアメリカ製の戦闘ヘリコプターで空からの掃討作戦をおこなう。軍事的に勝てるわけがない。

しかし、ゲリラ志願者が続くことで戦闘は続いてきた。
「自由のために命は惜しくない。今度山をおりるときは、私が死んだとき」
そう言うアルジンに、なぜ山に来たのかと尋ねても、言葉は少なかった。

だが、いまもイスタンブールにいる家族の話になると、急に顔が明るくなった。母さんがつくってくれた料理や、弟とサッカーをしたことなど、いろんな思い出を話してくれた。
15歳の少女だったアルジンは、なぜ山をめざし、ゲリラに参加することを決めたのだろうか。その後、私はイスタンブールに行き、アルジンの家族を探すことにした。 つづく
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(初出 04年)