イランは石榴の発祥地とも言われ、現在、その生産高は年間60万トン、世界最大の耕作面積を誇る。写真はイベント最終日の様子。(撮影:佐藤 彰)

イランの首都テヘランで、27日まで10日間に渡り、石榴(ざくろ)フェスティバルが開催された。

イランでは数年前から、石榴が収穫されるこの季節に、地方の市町村などで石榴狩りと地方物産展を兼ねた石榴フェスティバルが開催されているが、今年で5回目を迎えるテヘランの石榴フェスティバルは、テヘラン市と農業ジハード省の協賛による国内最大規模のものだ。

テヘラン市郊外のエシュラーグ文化会館の広い敷地を会場に行なわれたこのフェスティバルは、27日の最終日、雨天にもかかわらず多くのテヘラン市民で賑わった。
野外会場に一歩足を踏み入れると、開会式で披露された特大石榴ケーキのパネルが迎える。一週間かけて作られた高さ6.5メートル、重量800キロの巨大石榴ケーキは、開会式の終了とともに6千人の来場者に振舞われたという。

会場入り口の広場には特設ラジオスタジオが組まれ、司会の女の子たちの軽快なおしゃべりとともに、その日のプログラムの紹介や、各州の石榴、手工芸品ブースの紹介、また、石榴農家の方へのインタビューなどが行われ、会場全体に生放送された。

公園のように広い敷地の中心部には、各地方ごとのブースにその地方の石榴が山のように積まれた特設市場が設けられている。市価より2割から3割ほどの安さで即売され、キロ単位で買い込む客がほとんどだ。

さらにその周囲には、石榴ジュース、石榴ペースト、石榴アイスなどのデザートブース、地方特産のお菓子や民芸品のブース、子供向けのワークショップなどが広がり、石榴を使った料理教室なども開かれていた。また、珍しい薬用の黒石榴や、重さ3キロの巨大石榴も陳列された。

筆者が見学していると、すぐに国営テレビのカメラに捕まり、「日本では石榴はどのくらい食べられているのか」などとインタビューを受けた。お礼にお椀に山盛りの、実をほぐした石榴をいただく。イランではこれに塩と香辛料をふりかけて食べる。こうすると、酸味が和らぎ、甘さが引き立つのだ。

しかし、なぜテヘランで石榴フェスティバルなのか。このイベントを主催した文化会館、生活相談課の課長で前述の巨大ケーキ制作の陣頭指揮を取ったマリヤム・シールザーイーさんは、筆者の質問に対し、「石榴をきっかけに家族が楽しめる空間を生み出すことが最大の目的です。もちろん、このイベントを通して、石榴を食べる文化をもっと各家庭に広め、石榴の効能を知ってもらい、イランの各種の石榴を紹介することも目的です」と語ってくれた。

夕方、筆者は飛び入りで特設ステージの料理対決に出場させられた。歌を一曲歌わされ、半ば強引に勝者の判定をいただき、賞品と大量の石榴をお土産にいただいた。
夜になれば、各州の民族音楽の演奏や、詩のコンテスト、様々な野外パフォーマンスが催されるという。日が落ち、雨の冷たさが増す中、祭りの最後の夜を楽しむ家族連れの姿は一向に減る気配がない。市民の憩いの場に心を砕くこの国の行政関係者の姿に、テロや核開発といった言葉が霞んでゆく気がした。
【佐藤 彰】