生け花のデモンストレーション終了後、撮影に集まる人々。中央の大きな作品が、拾ってきた枯れ枝を利用したもの。「この枝にも力強い生命が感じられる」と新井さんは強調した。(撮影:佐藤 彰)

 

イランの首都テヘランで、日本大使館主催の日本文化週間が開催された。開催2日目の26日、会場となったテヘラン芸術会館を訪ねた。

この日のプログラムでは、書道、日本舞踊、生け花、茶道のデモンストレーションが行われる。他に常設展として女川町や飯舘村の小学生の絵画展が行われていた。
会場に入ると、書道のデモンストレーション会場から出てきたテヘラン大学日本語学科の学生に話しかけられた。「書道の先生の話に感激しました。決して諦めない日本人の心を知りました。僕は再来年に日本に留学しますが、必ず地震の被災地を訪ね、何かのお役に立ちたいです」と流暢な日本語で語ってくれた。

日本舞踊のデモンストレーションは、踊り手が女性であるため、見学出来るのは女性のみだ。筆者は日本人ということで特別に中に入れてもらうことが出来た。
150人収容の座席はすでに埋まり、立ち見の観客も出る盛況ぶりだった。すでにステージ上では、着物にスカーフ姿の二人の日本人女性が、「さくらさくら」を舞っていた。

踊り手の一人、花柳流師範・花柳ひな起さんが、通訳を介して踊りの背景となる日本の農耕文化や、踊りの動き一つ一つの意味を説明してくれる。今回の踊りは、外国人にも分かりやすいようにと花柳さんが特別に振付けたものだ。説明の後に改めてもう一度、踊りが披露された。最後の質問コーナーでは、時間いっぱいまで会場から質問が飛んだ。

イラン南部の都市シーラーズから来ていたマフディースちゃん(11歳)は、「説明があったおかげで、日本でも農業のために雨が重要なことが分かりました。桜で覆われた山の中で二人が踊っている姿が想像できて、とってもきれいでした。桜の木をいつかこの目で見てみたいです」と感激した様子で語ってくれた。

テヘラン大学の女子学生ラハーさんは、「日本の踊りはとっても真剣でびっくりした」と語った。イランでは踊ることは、古来から生活に根付いた庶民の楽しみだが、伝統的でリズミカルな旋律に合わせて自由に体を動かし、楽しむものだ。一方、物語性があり、すべての動きが決まっている日本の伝統舞踊が、「真剣そのもの」に映ったのも頷ける。

生け花のデモンストレーションでは、老若男女が会場を埋めた。パリからこのプログラムのためにイランを訪れた草月流師範・新井里佳さんのペルシャ語のたどたどしい挨拶によって、会場の空気はいっぺんに和んだ。
生け花の歴史、日本の風土と生け花の関わりについて説明が行われた後、次々と生み出される造形に観客が目を見張った。

特に日本の富士山によく似たイランの最高峰ダマーヴァンド山をイメージした作品や、ペルシャ絨毯をイメージした作品、また会場周辺で拾ってきたという大きな枯れ木が繊細な日本芸術に変貌してゆく様に、会場からため息が漏れる。
小学校の女性教諭ゼイナブさんは、「とても新鮮でした。イランには伝統的な庭園様式はありますが、お花そのものに様式は存在しませんから」と満足げに会場を後にした。

前日には、イラン在住の日本人女性によるフルートとピアノの演奏、剣道や居合道の演舞などが行われ、盛況を博したという。この後の三日間では、こうしたプログラムの他に、在テヘラン日本人学校とイランの小中学校との交流プロジェクトなども行われるという。
【佐藤 彰】